米国株 -『正しいものは美しい』

米国市場で「フルインベスト投資」を目指します。

1/16 いわゆる【変人】が株式市場で【勝者】となる

 2022年1月に入ってNY株式市場は幾分変調を来たし、保有株式の評価益減少で慌てた方もいらっしゃる事でしょう。しかし、株価が上がるためには一旦下がらなければならない事を忘れてはいけません。あたかも、垂直跳びの如くです。

  「垂直跳び」とは、助走をつけずにその場で垂直に跳んで、その距離を計測する種目です。跳躍方法は「膝」と「股関節」を曲げて、手の振りを使いながら爆発的に垂直方向に力を発揮します。但し、曲げ過ぎると距離が伸びませんので、曲げる膝の角度は概ね90度を目安にします。

 また、逆も真なりで、上がった株価は必ず下がって来ます。この現象を『ランダムウォーク』と命名され、株式市場の特徴です。であれば、この【節目を捉えて】売買すれば、自ずと利益が転がり込んでくるのですが、そう一筋縄ではいかない所が株式投資なのです。

株式取引で利益を出す

 配当(分配)金を受領する以外、株式取引で利益を出すには、短期・中期・長期の保有を含めて「株式売買で差益を得る」次のいずれかとなります。

  1. 購入価格より高く売却する。
  2. 売却価格より安く買い戻す。

購入価格より高く売却する手法

超短期・短期

 これは最も一般的取引で、超短期取り引きの「ディトレード」等は最たるものです。株価上昇度合いの勢いを勘案して、その流れに乗っかかる手法です。この場合は、上昇勢いの削がれた銘柄を選んではいけません。もちろん、『損切り基準』を自ら設定してキッチリと対処しなくてはいけません。

中期・長期

 ウォーレン・バフェットの代表的な手法で、銘柄価値よりも安値になっている株価の銘柄を買い集めて、市場で付く株価の再帰性をジィ~ッと待ちます。配当金の受領を含めて価値ある銘柄であれば永久的に保有する。利益獲得まで時間はかかりますが、米国株の将来性を信じる強い信念が必要です。

売却価格より安く買い戻す手法

 市場の流れが下向きになっている時に、確固たる信念に基づいて保有銘柄を一旦売却、後日安値になった段階で同銘柄を買い戻す手法です。売買に必要となる手数料を含めて利益を出す必要がありますが、これには取り組む時の『タイミング』が大事です。大局観を必要としますので、当ブログではお勧めしません。
 日本株では「信用取引の売り(空売り)」で入ればクリック1つで容易く取り組めますが、日本の証券会社を経由して米国株を取引する場合、現在、信用取引が認められていないので『空売り』はできません。*近々、可能となる情報もあります。

株式市場における株式売買

52週における「最高値」と「最安値」

 証券会社の銘柄ページには、当該銘柄(以下、ETFを含む)の52週における「最高値」と「最安値」の記載があります。これは、過去一年間における当該株価の最高値と最安値の表示になります。
 大きく乖離しているのが一般的なので、シンプルに考えるならば、この間で購入あるいは売却して株価が思った方向に動くまで待って、反対売買さえすれば利益が転がり込んでくるのです。

52週最高値を超えた株価

 株式投資を行って、買値を超えて勢いよく株価が上昇している時ほど楽しいひと時はありません。日々株価ボートを眺めるのが楽しく、評価益が出ている間は少々株式市場が変調を来たしてもドーンと構えていられます。但し、この辺りで生じて来る疑念があります。それは次ぎの2点です。

  1. 売却すべきか否か?
  2. 買い増しをすべきか否か?

売却すべきか否か?

 めでたく評価益が乗って来ると、売却して利益を確定すべきか否かを気にし出します。これは、人として自然の感情で、過去の苦い経験を交えて「ここから下がったら、どうしょうか?」の葛藤が始まるのです。
 悩んだ末に売却すると、決まって株価は更に上がります。投資家の頭の中には、そのような記憶しか残らないのです。ここでは『頭と尻尾はくれてやれ』の格言を思い出してください。

『頭と尻尾はくれてやれ』の格言

 これは、「底値価格(尻尾)と天井価格(頭)は誰かにくれてやる気持ちで、売買する価格に余裕を持って取り組め」という格言です。何事も余裕が大事で、狙い過ぎると元の子もなくなることを諫めた格言で、元は江戸時代、米相場で百戦百勝した相場の神様【本間宗久】が実践した言葉、行動なのです。「腹八分目」と言い換えても良いかもしれません。

買い増しをすべきか否か?

 問題はこのテーマです。中期・長期投資家を自任する投資家が、52週高値にある株価に対して買い増し行動に出ることの是非です。心の中で次のような葛藤が行われていることでしょう。

  1. 既に保有している銘柄の株価が値上がり、高値圏まで上って来る。
  2. やっと「周りの投資家がこの銘柄の価値に気づいて買いが増えた」と決めてかかる。
  3. しかし、自分の持ち株は躊躇していたことで未だ少ない。これを悔やむ...。
  4. 手持ち資金は多少持っている。いや、借入してでも....。
  5. 今、買い増ししておかないと、更に株価が高騰して手が出し難くなる。
  6. 事実、一昨日や昨日より株価が高値になっている。

 ここで、買わずに後悔するよりは(何も行動しないよりは)、買って後悔した方がスッキリとする、とばかり追加購入に進んでしまいます。結果、新たな購入層を巻き込んで、株価は更に上昇していくのです。

この先の顛末は、神のみぞ知る

 株価が上昇すると、買い増しに拍車が掛かる方が多いのはこのような理由があるからです。成否は神のみぞ知る範囲で、結果は武運に左右されます。言いたいのは、一般的に株価が上昇し始めると、保有株式が増えてしまうという事です。普通の方ならこれが自然です。

52週最安値を下回った株価

 買値を下回った銘柄。初めの段階では「バーゲンセールが到来」「これは神の恵みである」とばかり、一杯一杯まで追加購入を行い、嬉々として楽しいひと時を過ごしていても、一向に反転しない株価、更に52週最安値へ接近してしまうと、ガラッと気持ちが変化して来ます。

  1. 既に保有している銘柄の値下がりが続き、最安値付近まで下がって来る。
  2. 今まで、追加購入を行って悦に入っていたが、フト疑念が頭を過って来る。
  3. 「自分が知らない何か不利なことが起こっているのではないか」との不安が満杯になって、ネットで情報をまさぐり読む。ここ数日間、寝つきが悪い...。
  4. 今日も株価が下がっている。出来高が異常に多いのが更に不安を掻き立てる。
  5. 証券会社の株式保有欄を見ると、評価損額が赤字で埋め尽くされている。
  6. 今、売っておかないと、更に株価が下落して損失額が膨らんでしまう。
  7. 事実、一昨日や昨日より株価が下がっている。
  8. 我慢の限界。ここで「一旦、損切り売却して、更に値下がった段階で買い戻せば少しの足しにはなる」と自分自身に言い聞かせて『売却』を決断する。
  9. しかし、無事うまく買い戻せたためしはない。
  10. 何故なら、その銘柄の株価動向から遠ざかり(距離を置いて見なくなる)、他の銘柄へ投資先を移すからです。普通の方ならこれが自然です。

この先の顛末は、神のみぞ知る

 52週最安値に近づき、更新するような地獄の手前まで来ると、このような事情を抱えた投資家を巻き込んで、株安に拍車を掛けて一直線に下落するのが株価です。つまり、株価が下降し始めると、保有株式が増えずに減ってしまうのです。
 ことなく、目論見通りに当該銘柄を買い戻せればハッピーです。何故なら、人が人たる所以は【人間は忘れる生き物である】ことにあるからです。

 「人間は忘れる生き物である」とよく言われます。ドイツの心理学者であるヘルマン・エビングハウスが、「子音・母音・子音」からなる無意味な音節3文字を記憶させ、その再生率を調べるという実験(覚えた事をどのくらいの期間で忘れてしまうのか?という実験)を行いました。

  その実験によると、記憶してから. →【20分後には、42%を忘却】. →【1時間後には、56%を忘却】. →【1日後には、74%を忘却】. →【1週間後には、77%を忘却】  参照: sharosi.j-tatsujin.com/archives/1123

勝者となるには

 このように見てくると、株式投資で【勝者】となるには普通人でないことが必要となります。狙った銘柄の株価が下がり続けても保有一徹、何が何でも売らない強い気概がいります。高値もしくは安値のいずれで買ってもです。
 よしんば、倒産の憂き目(投下資金を失っても)にあっても平然としていられる度量が求められます。世間ではこのような方を【変人】と呼びます。


編集後記

 昭和から平成時代に亘り、「株式投資」や「不動産投資」の著書で人気を博した今は亡き邱永漢氏の奥様は、日本株で「52週最安値を下回った銘柄を黙って新規購入して、値上がるまで保有する」手法をよく執られていたと同氏の自著に記されていました。奥様は「次は上がるしかないから...」と平然と話されていたとのことです。経験に裏打ちされた株の本質を突く新規購入方法だと思います。一般人は、52週最安値へ下がるまで購入を思い止り、「買いたい症候群」を我慢できないのですから...。蛇足ながら、当時の単位株は今と異なり1000株/銘柄、売買手数料は一律の時代でした。
 何だかんだと書き連ねてきましたが、誰にとっても長年のテーマであり、解決困難な問題です。何事も辛抱と我慢が大事で、長い月日を味方にして対処するしかベストな方法はないと見ています。


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