米国株 -『正しいものは美しい』

米国市場で「フルインベスト投資」を目指します。

7/17【番外編】株式を買い進められない事由...

 米国株の代表的な株価指数である「S&P500」は、既に年初来で20%近くも下がっています。よって、これ以上の株価暴落が来ないと思うアナリスト達もいますが、私などは巷から流れて来る題材に、何一つ株価上昇のプラス面を感じなくなっているので、株価が上がる気がしません。

株価下落からの株価戻し...

 このような時でさえ、先週金曜日に米国株で発生したような「株価戻し」は、これからもチョクチョク見られる出来事となるでしょう。

デッド・キャット・バウンス

 米国の ウォール街で使われる格言の一つに「デッド・キャット・バウンス」があります。意味するところは「高いところから落とせば、死んだ猫でも跳ね返る」に由来し、具体的には、急激な下落相場で取り立てて買い材料がないにもかかわらず、短期的に株価が回復するような局面を指します。 しかし、あくまでも「株価下落」が先にあって、これに対する「株価戻し」を誘発しているだけで、それ以上でも、また以下でもないわけです。

適度な冷却期間を要する

 投資家に対して「適度な冷却期間」を与え月日が経過しないと、株価戻しに終始するだけで、株価上昇へギアチェンジすることは、かなり先まで叶わないような気がします。
 この辺で「株式を買い進められない事由」、逆に「買い進めたくなる事由」をザックリと挙げてみて検証するのも乙なものです。しかし、残念ながら、いずれが正解なのかは不明です。これは投資家それぞれが判断すべき事項で、これこそが「投資は自己責任」と言われる悲しい所以です。

株式を買い進められない事由

  1. ウクライナ侵攻で西側先進国による「ロシアへの経済制裁」が続いていること。
  2. 米国内のインフレ亢進が止まらず、FRBが金利を引き上げ続けていること。
  3. FRBの米国内での金融緩和が終了、FRBが引き締めに転じていること。
  4. ドル貨の一人高独歩で、米国企業の収益力に陰りが見られること。
  5. 中国で都市封鎖が断続的に続いており、サプライチェーン回復が滞っていること。
  6. 米国株式市場での平均株価上昇期間が長く、投資家に「買い疲れ」が見られること。

1.「ロシアへの経済制裁」が続いていること

 全ての事の発端は、西側先進国が始めた「ロシアへの経済制裁」に尽きます。これが大元なので、経済制裁(ロシアの地下資源や穀物、肥料等の【供給量に制約】が生じている)が行われている限り、ブーメランのように西側諸国へ様々な事柄が襲い掛かって来ています。

破綻する国家が次々と現れる...

 スリランカがドル外貨消滅で、国家破産したことは最たるものです。更に、第二、第三のスリランカが次に控えています。そして、このような国々に対して、ロシアが原油や穀物をルーブル建輸出しては恩を着せるのです。欧米はウクライナ軍事支援にかまけて、第三国への救済をおざなりにしていますので、結果として反欧米諸国が増えます。一体全体、何のための「ロシアへの経済制裁」なのか、ハナハダ疑問です。

2.~4.に関して

 2.~4.までは、この1.によって引き起こされていると私は考えていますので、「ロシアへの経済制裁」を解除しない限り、2.~4.のスッキリとした解決策はありません。
 解除なしで解決したいなら、米国社会を【大不況が襲う】ことです。言い換えると、米国社会を【大不況に襲わせる】ことです。今、まさにFRBが進めている各種施策(市中金利の大幅な毎月利上げ等)はこれに該当します。

全ては、秋の中間選挙対策の一環である・・・!

 ちなみに、米国企業の海外収益が落ちる「ドル高」をバイデン政権が容認しているのは、米国社会へ輸入価格を少しでも引き下げて、物価高を抑えたい思いからです。そして、根底には『民主党が、秋の中間選挙で「共和党」に負けない』ためです。更に、言い切ると、トランプ氏に高笑いさせたくない、何が何でも、負けたくないのです。

5.中国の都市封鎖で、サプライチェーン回復が滞っている

 いつまで続く新型コロナ対策。この日本でもかつて陽性者がメチャクチャ少なかった都道府県で、過去最高の陽性者数が報告されています。さも、中国でもこれ以上の発生状況なのでしょう。で、中国は相も変わらず、都市封鎖によって【新型コロナ陽性者の撲滅】を推し進めています。
 こうなれば、世界の工場との異名をもつ中国で経済停滞が人為的に発生しているので、数カ月先の景気動向を占う「現輸出入が停滞」、その余波が各国に伝播して本山の米国へも還流して来ています。
 更に、中国国内では過剰な不動産融資にイエローカード(立場が代わればレッドカード)も垣間見られ、人民に至っては住宅ローン不払い運動までが出始めている始末で、【中国発の金融不安・危機説】が強く流れ始めています。最悪、欧米金融機関の受ける影響度は計り知れないものがあります。痛手は中国に前のめりになっていた欧州金融機関、特にドイツ銀行やスイスの大手銀行がやばい、との噂が強く出ています・・・。

6.株価上昇期間が長かったので、投資家に「買い疲れ」が見られる

 新型コロナが中国武漢から世界に伝播し始めた頃、ウォール街が過敏に反応した(2020年3月、平均株価急落)ことがありましたが、これを除き、2008年のリーマンショック以降は、ひたすら株価上昇が続きました。
 そろそろ『大幅な株価調整がやって来る』と言われながらも、小幅な株価調整を経て、更に株価が飛躍する「売り方の受難時代」が長い間続いたのです。すると、

  • 「株価は上がるものである」との妄信が市場を支配することに翳りが出始め、「株式を買い上がる」のに疲れ始めた投資家が増えてくる。
 これぞ、株式市場で繰り返される歴史であり、今回、余りにも上昇する期間が長かったことで、谷底を深くし過ぎてしまう懸念が強まっています。まさに『山高ければ、谷深し』です。なお、その逆は『谷に深ければ、山高し』で、いずれも正しい格言です。

「びっくり10大予想」の2022年版(ブラックストーン・グループ公表)

 今年1月3日に、ウォール街のご意見番として知られる米投資ファンド大手ブラックストーン・グループが公表した毎年恒例の「びっくり10大予想」の2022年版を紹介します。
 なお、公表時点でロシアのウクライナ侵攻は起こっていません。



 この「びっくり予想の定義」は、平均的な投資家が発生確率を3分の1程度とみるイベントで、ラックストーンは5割以上と予想するもの。公表は今年で既に37回目となり、毎年市場関係者が注目しているものです。半年が過ぎましたので、検証するのも楽しいでしょう。

 予想の中で最も注目される市場見通しでは、インフレ拡大や金利上昇、株式の調整売りもあるというもので、投資家にとっては試練の年になりそうだ。

 S&P500種株価指数は高値から20%下落する「コレクション」に近い幅の下落をいったん経て、年末までには前年から横ばいになると予想。ハイテク株などのグロース株は軟調となり、一方で割安銘柄のバリュー株の堅調を見込んでいる。


 インフレについては賃金や家賃が引き続き上昇することで、消費者物価指数(CPI)は今年1年で4.5%上昇すると予想する。インフレは今年を通じてしぶとく高止まりし、当初、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が指摘していた「一時的」とはほど遠い状況になりそうだ。


 インフレ圧力上昇を受け、金利は上昇し、10年物米国債の利回りは現在の1.63%前後から2.75%まで上昇するとみる。また、FRBは年内に4回利上げを実施するとし、FRBの現在の見通しである年3回の利上げに比べ、タカ派的な見通しを示した。

 投資家の間では、インフレヘッジに金への投資が活発になり、金相場は1年間に20%程度上昇し、最高値をつけるとみる。原油価格も需給ひっ迫から上昇を続け、1バレル100ドルを超えると予想している。


 新型コロナウイルスの感染拡大は今年も引き続き深刻な状況になると見込むが、米国では大規模集会やスポーツイベントなどが復活し、生活が平常に近づくと予想。週に3~4日の頻度でオフィスへの出勤も復活するとみている。


 国際情勢では中国が引き続き世界から注目を集める年になりそうだ。不動産投機への中国政府の規制が強化されることで、中国の国民の投資マネーが他の金融商品に向かうと見込む。欧米の金融機関にとっては中国での資産運用ビジネスで大きな商機になるという。


 また、電気自動車の普及でリチウム電池の需要が高まるが、中国がこの市場を独占し、生産も中国の自動車に振り向けることで、米国が電気自動車の生産を計画通りに進められない状況に陥ると警告している。(日経新聞 2022年1月4日 7:59)

逆に、株式を買い進めたくなる事由

  1. S&P500は6カ月程で最高値から20%下落するなど、下落度合いが急であること。
  2. 値上げが行き渡るなら、インフレ率上昇に株式の適応力は高いと見られること。
  3. 不況風が吹けば、大企業の寡占化率が強まること。
  4. 株価下落に伴い、自社株買いで株式数の減少率が高まる(一株利益率の増加)こと。
詳細は、明日以降の掲載に続く・・・

編集後記

 株式というものは、一直線に下がるものではなく「ジグザクと曲がりくねって」比較的ゆっくりと落ちるものです。「真綿で首を絞めるような...」と表現する方もいらっしゃいますが、下がって欲しくない投資家の心の葛藤が為せる業なのでしょう。『天井3日、底100日』の箴言も市場にあるので、落ち始めると止まり難く、上がり難いのが市場の特性で、古から難儀していた動きなのです。
 今回の株価調整・暴落も過去に経験した同じチャートで進む可能性が高い、と睨むのが妥当なのですが、一点大きく異なるのは、資源と穀物大国のロシアを「西側先進国の経済サークル」から排除してしまっていることです。

『衣食足りて礼節を知る』の格言

 この取り組みは米国と英国が中心となって進めていることなのですが、インフレ亢進でアンチ経済制裁の国々も多く、今や第二の国連を立ち上げるべきであるとの勇ましい論調も出始めています。
 世界を2分する動きへと高まって来るのか、否か。この方面でも、我々は注目していかなくてはいけません。古くは『衣食足りて礼節を知る』の格言があるとおり、生き延びるためには、他人様のことなど、もはや構っていられませんから・・・。

弱り目に祟り目

何をやっているんだか、知れたものじゃない。


7/17【番外編】株式を買い進められない事由...