9/18【番外編】政策金利1%引き上げ説が、決して消えない事由...
市場関係者は、来たる9月20、21両日の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で、7月に続く0.75%の利上げが確実と捉えています。そして、9月13日に発表された「8月の米消費者物価指数(CPI)」が、予想を上回る伸びを示したことを受けて、さらに0.25%高い1%引き上げの可能性を公言し始めました。
今回、とてつもない引き上げ幅とされる『1%』。これがホントに実現する可能性があるのか否かを見ていきましょう、と云う企画です。
3月の利上げ開始から、既に2.25%の引き上げ...
連邦公開市場委員会(FOMC)は、6月と7月の2会合連続で政策金利を0.75%引き上げており、3月に利上げを開始してからの引き上げ幅は合計2.25%にも達しています。
そして、9月の同会合で少なくとも0.75%の利上げを決定すれば、半年で3.00%の引き上げ幅となり、市場に対して強力なメッセージを送ることになります(1%の引き上げでは3.25%へ到達)。今年、11月と12月にもFOMCが開催されます。よって、政策金利水準を4.0%へ引き上げてから、『年越し』となる可能性が大です。
考えられる、1%引き上げを後押しする事由
- 9月以降、年内に金利を引き上げる機会(FOMC)が、11月と12月の2回しか残されていないので、悠長に構えているとインフレに背中を突かれ崩壊すること。
- 万人向けに、金利引き上げ効果の痛みを実感させる手段として、「株式市場の株価下落」と「米国債10年利回りの上昇」を是非ともに実現させる必要があること。
- 上記1~2を踏まえると、既に市場に織り込まれた金利の引き上げ幅(0.75%)では事足らず、引き上げ幅の『サプライズ感』が強まっていること。
- 秋の中間選挙で、与党民主党の敗北が想定以上となった場合、金利高に抵抗の強い共和党の党勢が拡大するので、選挙前に一層の引き上げを実現しておきたいことこと。
- インフレ見込みを読み間違ったパウエル議長や他のFRB理事にとって、インフレ抑止へ果敢に立ち向かった名声が一応保てること。
- 4月以降、各種講演会や会見でFRB理事等の言及した内容との整合性を考えると、早急に「インフレ率」-「政策金利」=「プラス水準」への誘導が求められていること。(*現行、「インフレ率6%台」-「政策金利2%台」=「マイナス水準」)
- 過去の例からしても、「引き上げ期間は短く」して、引き下げ可能な 「維持する期間を長く」したいのが、FRBの基本政策であること。
- 『インフレに敗北したFRB』悪評を払拭、対ボルガー元FRB議長を超えるポジションを獲得したい現FRB執行部と連銀幹部の本音実現のチャンスであること。
まとめると、このようなやんごとなき事由で、市場関係者の間では「1%」の引き上げ幅が真剣に語られています。私ごときも背景となる事由を具にみてみると、さもありなんと思ってしまうのです・・・。
考えられる、1%引き上げを躊躇する事由
- 市場織り込みの0.75%超の金利引き上げになると、30年住宅ローン金利が6%台に既に高騰していて、更に住宅購入が難しくなることに拍車を掛けること。
- 「1%ショック」で、米国株式市場に超弩級の激震が走ること。
- 1~2だけを見ても米国経済に大きなマイナスとなり、11月投票の「秋の米国中間選挙」で、与党民主党の敗北が更に強まること。
- 3の結果が、FRBの金融政策によるものとして片づけられ、FRBが全ての責めを押し付けられるので、『万人向けに妥当な引き上げに止める』衝動が勝ること。
ザックリと見渡して、この躊躇する事由の説得力は弱いような気がします。しかし、人間的には採用し易いでしょう。FRBが政治家集団なのか、あるいは政策家集団なのか、あと数日後に判明します^^。
私が思う、米国経済の再生の芽を残すには...
この9月で大幅な引き上げを実行しておかないと、ズルズルと次回の11月、更に次の12月と通常の引き上げ率(0.25%)に止まらない率を続けてしまうことになり、米国経済の『再生の芽を根絶』して、米国を完全不況へ向けてしまうことになりかねないからです。よって、民主党としては、米国経済の再生の芽を残すためにも、次の事ぐらいを政策として打ち出すべきです。
- 9月に、サプライズ的な大幅な金利引き上げをFRBが持ち出すこと。
- バイデン政権及び与党民主党は、「学生(奨学金)ローンの徳政令」のような若年層をターゲットにした施策を打ち出しすこと。
- 老健者向けには国民皆保険(オバマケア)の一層の拡充策を打ち出して、反対する共和党との違いを露出させ、騰勢を戻すこと。
結語
このように分析すると、我々凡人には敢えて緒ド級の引き上げ幅を1%(政策金利を3.25%~3.50%)にする手段を『是』としてしまいそうです。これでも実質金利は、マイナス水準のままですから・・・。
如何に、インフレ進捗率が早いのか、あるいは金利引き上げが遅すぎたのか、いずれかが正しくて、いずれかが間違っているのです。しかし、齢を重ねたパウエル議長及びFRB理事は、無難な0.75%引き上げ路線に落ち着くことでしょう。11月に実施される中間選挙に対して「1%の引き上げ」は、関係者にとって余りにも『責が重過ぎ』ます。
編集後記
某アナリスト談として、「連邦準備制度は市場の予想に従いたいと考えており、市場が0.75ポイント利上げを見込んでいることから、そうなるだろう」と述べていました。案外、これが尤もらしい理由なのかもしれません。
また、重鎮のサマーズ元財務長官はツイートで、自分が金融当局者なら「信頼性を高めるため1ポイントの動き」を選ぶだろうと述べました。う~ん、枠外に居るからかな?
某債券戦略責任者の談としては、「当局が急ペースで利上げを行う必要があるなら、迅速に進めてけりをつけることが最善だろう。0.75ポイントとなる可能性が最も高いが、1ポイントを選ぶべきだ」と指摘しました。
更に、某ストラテジストは、「1ポイントの利上げを市場は嫌うだろう。わずか数日前には0.5ポイントないし0.75ポイントの利上げで十分かどうか議論していた。1ポイントの利上げはパニックの動きと受け止められるだろう」と指摘しました。
注目の週明け米国市場の動き
週明けの米国市場の動きがどのようになるのか興味が尽きない所です。なお、FRB関係者からの発言は禁止期間に入っているので全くありません。
市場関係者のホンネとしては、1%対策を無視してやり過ごすことはできないでしょう。すると、無駄な「ヘッジ対策の出費増」となるのか否か(株価下落のヘッジ対策オプション料が、既に1兆円越)。やっぱ、株式市場は開帳の胴元が儲かる仕組みであること。此れこそは、いつの世も不変なのです。
備忘録
*1%引き上げの場合、ドル/円為替が怒涛のように「円安」に振れると踏んでいます。米国株式市場が下落しても、投下できる米ドル確保に戸惑っている(強烈な円安に躊躇)と何もできないので、日本の投資家としてはドル資金の手当てを優先させるべきかと・・・。
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