米国株 -『正しいものは美しい』

米国市場で「フルインベスト投資」を目指します。

7/03 下半期におけるドル/円相場の見込み(予測)

 ドル/円のような為替相場、例えば、ドルに対する円貨の動きは、所詮上がるか・下がるかの2者択一に収束します。超短期の動きは思惑に左右されて「博打的なチャート」になり易いですが、中期・長期は何らかの基礎的指標が支配する世界なので、専門家の見込み・未来予測を味方に付けることに勝るものはありません。
 このブログでは、三菱UFJモルガン・スタンレー証券のチーフ為替ストラテジストである「植野大作氏」のロイター外国為替フォーラムに掲載された個人的見解を引用、参考にさせていただいています。(為替フォーラム 2022年6月29日10:49 午前)


次の円高は1年以上先、3つの要素は円安示唆...

 ドル高・円安が勢いを増している。6月22日の東京市場では一時136円71銭と1998年10月以来、約23年8カ月ぶりの高値圏まで買い進まれた。

 3月に記録した直近安値の114円65銭から、約3カ月で22円06銭もの高騰だ。この間、ドル/円の週足陽線の出現確率は、7割6分5厘にも達している。近年に類例をみない速度と値幅でドル高・円安が進んでいる。

 この先もしばらくの間、ドル/円は歴史的な高値圏での上値試しを続けるだろう。為替予想の三大要素は「テクニカル」、「ファンダメンタルズ」、「需給」だが、現在はそのいずれもがドル高・円安局面継続を示唆しているからだ。

強化された52週移動平均線の右肩上がり

 筆者(植野大作氏、以下同じ)は、為替投資家達が3カ月間で22円06銭ものドル高・円安貯金を荒稼ぎしてしまったこと(テクニカル面)で、ドル/円相場の「骨太のトレンド」を判定する際に最も重視している【52週移動平均線の右肩上がりの傾向】が一段と強化された。と論じられています。

 「過去1年間で稼いだドル高・円安貯金を全て吐き出すまで、右肩下がりに転じない」という52週線の性質を考慮すると、仮に今後、何らかの「円高ショック」に見舞われて巡航高度が130円前後まで下がっても、来年(2023年)の春過ぎまでは、52週線の右肩上がりの傾斜はビクともしないで、下値サポートの底上げが続く。

 昨年(2021年)1月安値の102円59銭を大底にして、現在のドル高・円安トレンドが始まってから、まだ17カ月しか経っていない。過去5回のドル高・円安局面の平均寿命は31.2カ月であり、まだ、あと1年近くは右肩上がりの傾向を維持する可能性がありそうだ。

需給で見た円売りの強さ(実需のドル不足)

 筆者が強調されているのは、「円債投資の代替としてのヘッジ付き米国債投資は事実上、ワーク(機能)しなくなるだろう。」という点です。今後、FRBが政策金利を3.75%前後まで引き上げたなら、ドル・キャッシュの短期ファンディング・コストも急騰し、為替スワップ市場(為替予約、為替ヘッジ等)における『ドル/円の為替ヘッジコストは4%近くまで上がる可能性』がある。との一点です。

満期時の為替予約(ドル売り/円買い)

 一般的に、機関投資家が外債(ドル債)投資(購入)を行う際には『満期時の為替予約(ヘッジ付、ドル売り/円買い)』を付して行います。予約手数料が掛かかり、利回り低下を招きますが、実質利回りを特定期間内で確定できる利点があるからです。例えば、生保がドル債投資を行う時などは、購入に際して「ドル買い/円売り」が発生し、為替予約で「ドル売り/円買い」も同時発生しますから、外債購入で為替は動かないのが一般的です。

円債投資の代替としてのヘッジ付き米国債投資は事実上、機能しなくなるだろう

 しかし、FRBが政策金利の引き上げ続けると、為替予約ヘッジを行う為替スワップ市場で「逆ザヤ」が将来的に発生することが考えられる(債券残存全期間で一気にヘッジできない)ので、「ヘッジ付き米国債投資」のヘッジ解消と「ヘッジなし(為替オープン)米国債投資」の新規購入が増加することが見込まれます。結果として、『ドル買い/円売り』圧力が一段と強まって来る。というものです。

135円は、単なる通過点か…

 筆者は『為替需給の三大要素を構成する「投機」、「投資」、「実需」の各分野では、いずれもまだしばらくの間はドル高・円安圧力優位の状況が続きそうだ。』と見立てを強め、今の『135円/ドルは、単なる通過点となる可能性が高い。』と説きます。

これから、140円超の空中戦を見る…

 想定可能なリスク・シナリオが炸裂しない限り、筆者は『今のドル高・円安局面におけるザラ場のトップ・レベルでは140円超の空中戦を見る可能性もあるだろう。』と説き、『今のところ、「テクニカル」も「ファンダメ」も「需給」もドル高・円安推しの局面が続いている。』とし、『次の円高サイクルが来るのは、1年以上先とみておきたい。』で締め括っています。想定できるリスク・シナリオとは、次のようなものです。

  • FRBが利上げ停止に動き始める。
  • 日銀が利上げ容認に動き始める。

信じる、信じないは貴方・貴女次第です…

 筆者は、自信をもって断言気味に話を進められる傾向があります。何があっても逃げられるような対策は捨て去り、論を進められる組み立てに私は好感を抱いています。このような未来予測の話に擦り寄る、離れるは貴方・貴女次第です。

半年前(2021年12月30日)の為替フォーラム

 丁度、2021/12/30付の投稿がありますので、ご紹介します。筆者に置かれては、定期的に未来予測の自説を公開するのは「仕事」とは言え、プレッシャーが圧し掛かって苦労されていると思います。なお、以下のコラムは、半年前、ロシアのウクライナ侵攻の兆候がない状況下で書かれたものです。(為替フォーラム 2021年12月30日 10:05 午前)


  • テクニカル面では、昨年(2020年)まで5年も陰線が続いた後、今年6年ぶりに陽線が出現したならば、「日柄の感覚」から言って、たった1年でドル高・円安局面が終わる可能性は低い。
  • 長く続いたトレンドがいったん終わって局面が切り替わると、新たなトレンドが1年で終わることもまれである。
  • ドル/円が今の仕組みで動くようになった1973年以降、1990年から94年にかけて、5年連続の陰線が出現したことが過去にも1度あったが、その後は3年連続の年足陽線が出現し、月足で確認できる下ヒゲの先端79円75銭から上ヒゲの先端147円66銭に至るまで、大幅なドル高・円安が進んでいる。
  • ファンダメンタルズ面では、数年先までを見据えた日米政策金利差の拡大観測が一層強化された。
  • 今年(2021年)、円を売った有力な犯人の一人である海外投機筋は円売り余力を残した状態で越年し、来年(2022年)も同じ行動をとる可能性が高い。
  • 今年(2021年)夏場に赤字に転落した日本の貿易収支は、来年も赤字基調で推移する可能性が高い。
  • 実需のドル不足の金額は、季節調整済みの年率換算で12兆円規模に達していると推定される。
  • 為替の水準に左右されず、片道切符で持ち込まれる価格弾力性の低い実需のドル買い切りフローは、ドル/円の下落局面では下値を支える「縁の下の力持ち」になり、上昇局面では高値更新を促すスパイスの役割を果たす。
  • 筆者の経験則に基づく試算では、貿易決済に由来する実需のドル不足が来年も同じくらいの金額で続く場合、毎月約50銭、年間では6円程度、ドル/円相場のレンジ底上げに寄与するとみられる。
  • 近年の日本は海外に保有している純資産から定期的に上がる利息や配当でしか安定的な黒字を稼げない国になっている。
  • 以上の要因を加味した上で、来年(2022年)のドル/円相場については円安持続の大局観を維持したい。ドル高・円安局面の賞味期限が来年中に切れる可能性は低そうだ。

編集後記

 米国株の値下がりは、今や止めようがなく、流れるままに任せる他ないですが、円貨換算値では円安で頑張ってくれているのが見てとれます。
 私は、バクチ的要素が強いFX取引などは行いませんが、今年の下半期に何処まで円安が進むのか、詰まるところ【円安に進むことが、ポートフォリオにおける一角の安心料】になるのでは?とみています。

弱り目に祟り目


7/03 下半期におけるドル/円相場の見込み(予測)