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12/27【番外編】譲渡損失の繰越控除、損益通算の税務処理...その3

 今回が最終回です。もう暫く、お付き合い下さい。過去3年以内に支払った株式の譲渡益にかかる税金(国税と住民税)と配当に掛かる税金(国税と住民税)を、取り戻す為に確定申告の「譲渡損失の繰越控除、損益通算の税務処理」を自己申告することで、損失分に相当する支払い済みの税額を取り戻すことが出来ます。

譲渡損失の繰越控除、損益通算の税務処理のデメリット

 但し、このデメリットとして、儲かった年度の株式取引に掛かる税額(利益額)を自ら進んで、税務署と市町村の市民税部門へ名乗り上げることになるので、「特定口座(源泉徴収あり)」のメリットである【秘匿性】を捨てることになってしまいます。捨て去ると、納税者個人が特定されてしまい、「株式で得た所得」と「給与等の所得」とが合算されてしまうのです。

12/27【番外編】譲渡損失の繰越控除、損益通算の税務処理...その3

所得額を増やさない、ウルトラCの「住民税申告不要」制度

 一般的に確定申告を行うと、国税だけでなく市町村の住民税部門にも個人の納税情報が共有されることになっています。この共有システムを放置すると、利益が出ている年度は所得が大きくなります。
 「住民税申告不要」制度とは、一言で申し上げると『住民税には株式で得た利益(譲渡損失の繰越控除、損益通算の税務処理)の確定申告を行わない』と宣言することです。

平成29年度税制改正

 この制度が、各市町村に等しく現われて来たのは、平成29年度税制改正のようです。以前は、市町村によって対応していたり、周知していたりしていなかったりと、ハッキリしていなかったと聞いています。
 所得税では総合課税あるいは申告分離課税をを選択し、住民税では申告不要制度とする。このように異なる選択が、申告者自身の判断でできるようになったのです。

市町村役場の市民税部門へ出向いて申告する・・・

 方法としては、国税の確定申告を終えてから、市町村役場の市民税部門へ出向いて「住民税申告不要」制度を選択する旨を自己申告するのです。
 具体的には、住民税の申告において譲渡益や配当の申告不要を選択することになるので、譲渡益や配当に対する「支払い済みの住民税5%」を取り戻すことはできません(放棄)。

影響を受けるであろう「市町村の項目類」はあるのか?・・・

 「住民税申告不要」制度は、所得金額を増やさないので、次の項目には影響がないことになります。損得を天秤に掛けて判断されることです。なお、「住民税申告不要」の申告は、納税通知書が送達される日(概ね6月上旬ごろ)までに行う必要があります。
 なお、譲渡損失の分だけ譲渡益や配当を計上することはできません(但し、特定口座ごとに「する・しない」を選択することは可能です。)

  1. 国民健康保険料の保険料等の算定
  2. 介護保険料の保険料等の算定
  3. 後期高齢者医療保険料の保険料等の算定
  4. 保育料の料金等の算定
  5. 住民税の配偶者控除
  6. 住民税の扶養者控除
  7. 住民税の非課税判定
  8. その他、行政が行う諸制度の判定基準・・・

令和3年度から「住民税へ全額の申告不要」チェック欄が登場...

 令和3年度から税務署のWEB版確定申告システム上に、「住民税へ全額の申告不要」チェック欄が設けられて好評を博していました。大概の人は意味不明であったろうと思いますが・・・。このチェックを有効にすれば、市町村へ出向く必要がなくなったのです。


12/27【番外編】譲渡損失の繰越控除、損益通算の税務処理...その3-2

「5%の住民税取り戻し」> 「所得金額の増加懸念」

 所得金額が増加しても気にしない。住民税を少しでも取り戻すことが大事である方向けです。税務署へ提出した確定申告書どおりの内容が、市町村の市民税部門へ伝わるように何もしません。なすがままにします。

「5%の住民税取り戻し」< 「所得金額の増加懸念」

 「住民税申告不要」制度を活用します。所得金額が増加するデメリットや影響度合いを、1年6カ月後の先まで勘案して軽重を判断します。検討期間は、納税通知書が送達される日(概ね6月上旬ごろ)まで。遅れたらアウトです。

令和5年度の税制改正大綱の概要

 個人投資家にとって最後の「抵抗棒」として残されていた「住民税申告不要」制度ですが、来年(令和5年)度の税制改正で廃止されることが決まっています。
 令和6年度(令和5年分)以降の市民税・県民税については、所得税と課税方式を一致させることとなり、課税方式を選択できなくなります。

「住民税申告不要」制度の廃止、この影響は....?

  • 何が何でも、市町村へ所得額の増加を嫌う方なら、確定申告で株式取引に掛かる利益を一切申告しない事です。そして、株式取引では決して「年度を超える損失額を発生させない」事に尽きます。
  • 市町村へ所得額の増加を気にされない方なら、今までどおり「所得税=住民税」として簡易に済ませることです。
  • 近い将来、申告分離課税も廃止されることでしょう。マイナンバー制度が浸透し充実したその時、税は総合課税方式に一本化される筈です。末端まで完全に把握されて、ケツの毛まで役人に抜かれることになる世が、すぐそこまで来ています。

編集後記

 岸田政権は「金融所得を増加させることを主眼に」と、事ある毎に言及します。令和5年度の税制改正大綱には、NISAシステム期間の無制限や金額の増額が盛り込まれています(贈与の最たるものである「ジュニアNISA」は廃止)。
 しかし、「住民税へ全額の申告不要」システムの廃止をそっと盛り込んだのは、資産を持つ年金受給の高齢者層を狙い撃ちしたものです(国保料、介護保険料の増額徴収狙い。扶養控除額の縮小狙い。)。
 霞が関の役人は、この高齢者層から金銭を毟り取る気満々ですし、挙句の果てには日本全体を貧乏国に落とし入れる腹積もりなんでしょう・・・。今以上の円安が将来必定なので、ドルをしっかり握って、決して放してはいけません。


12/27【番外編】譲渡損失の繰越控除、損益通算の税務処理...その3-3