12/27【番外編】譲渡損失の繰越控除、損益通算の税務処理...その2
前回の「その1」では、ざっくりと「制度自体の説明」と「秘められた仕掛け」を呟きました。今回の「その2」では、住民税にまつわるワナと令和5年度税制改正の概要について、ちょこっとだけ話させていただきます。
「特定口座(源泉徴収あり)」の区分を対象とします...
株式取引口座を開設する時、個人投資家であれば「特定口座(源泉徴収あり)」とするのが基本です。これ以外の税体系を選択している個人投資家は、以降、お読みになる必要はございません。対象とするのは、零細な「特定口座(源泉徴収あり)」の個人投資家です。
話の前提として・・・
前提としては、① 某年に株式譲渡(売買)で損失額を抱えたので、確定申告の「譲渡損失の繰越控除、損益通算の税務処理」を税務署へ届け出した。② 翌年、株式譲渡(売買)で利益を得たので、納付済みの税金(所得税と住民税)を前年度の赤字分と相殺して取り戻すべく、「譲渡損失の繰越控除、損益通算の税務処理」の確定申告を行うといった筋書きを想定しています。
株式の譲渡税と配当(所得)税には、国税と住民税があります...
「特定口座(源泉徴収あり)」を選択すると、税の徴収や差し引き等の簡易な年末調整を加入している証券会社が代行してくれます。これは、日本政府から法律でがんじがらめにされているからに他なりません。決して、好きでやっているのではありません。
証券会社は、「1月1日~12月31日の1年間」を納税対象期間として、皆さん方から預かった「譲渡に掛かる売却益」と「配当金・分配金にかかる所得益」に対して、最後の最後には年末調整までを実施して、「15%の国税と5%の住民税+復興税」を税務当局へ支払っているのです。
3年間の譲渡損失の繰越控除、損益通算の税務処理が登場
10年以上も前の話ですが、諸外国のように株式投資に対して、「3年間の繰越控除、損益通算」を制度として認める税制改正が行われて、現在に至ります。
この制度の特徴として、初年度は「損失が発生した年度」から始まることです。
例えば、令和4年に株式投資を開始、1年間の譲渡トータルが̠マイナスであった時には、「3年間の繰越控除、損益通算」を所轄税務署へ、あなたが『確定申告』時に届け出ることで、この制度の適用が始まります。
が、しかし、幸いにも1年間の譲渡収支トータルが̠プラスであった時は、「3年間の繰越控除、損益通算」の適用を税務署へ届け出ることはできません。何故なら、株式売買でプラスだったからです。
はじめの一歩は、必ず『譲渡損失があった年度から...』始まるのです。
証券会社はデータ類が記載された書類配布を投資家に行いますが、損益通算の計算や税務署への届け出は、投資家たる貴方自身で行う必要(税理士の代行は可能)があります。税制の基本は届け出なので・・・。
あなたが、雇用されている給与制サラリーマンなら、ここでお終い・・・
具体的に申し上げると、貴方が給与制サラリーマンの方なら、会社で健康保険、年金、雇用保険、労災保険等に強制加入されていて、給与からこれら保険料が天引きされている方なら、以降に申し上げる衝撃波が1/2以下に軽減されます。
政府が用意した「譲渡損失の繰越控除、損益通算の税務処理」で損得を計りに掛け、最大限利用なさって下さい。
あなたが、個人事業主や年金受給者、無職の方なら・・・
さて、ここからが本番です。玉突きで影響を大きく受ける方は「給与制サラリーマンが1/2」なら「個人事業主や年金受給者、無職の方は100%」になります。具体的には、次のようなものが大きく影響を受けます。但し、上記で云えば ② に該当する場合です。① は少なくとも1年間は影響ありません。
- 国民健康保険料の保険料等の算定
- 介護保険料の保険料等の算定
- 後期高齢者医療保険料の保険料等の算定
- 保育料の料金等の算定
- 住民税の配偶者控除
- 住民税の扶養者控除
- 住民税の非課税判定
- その他、行政が行う諸制度の判定基準・・・
何故、影響がでるのか?
過去3年間に支払った税金を取り戻すべく、確定申告で「譲渡損失の繰越控除、損益通算の税務処理」を望み、『利益が出ている当年度の譲渡益や配当を申告する』からなのです。
そもそも「特定口座(源泉徴収あり)」の個人投資家は、制度的に確定申告をしなくても【OK】です。何も申告しなければ、税務署や市町村はあなたの所得(利益)金額を把握できません。あなた自身が行う確定申告で、あなたの所得(利益)金額が自主的に公になるのです。ここが『ミソ』なのです。
申告された株式の所得(利益)を、あなたの年間所得として捉える...
市町村の市民税担当部門は、あなたから確定申告された「株式の所得(利益)」を、あなたの当年度の所得として捉えて、給与所得や事業所得と合算します。
但し、損失であった場合は、差し引かれない!
では、あなたが確定申告した「株式の所得」が【損失】であったなら、どうでしょうか?上の理屈で申し上げると、給与所得や事業所得と合算(差し引き)して減らしてくれるのでしょうか? 答えは「NO(ノー)」です。バランスを欠いた対応に不満を募らせる方が多数いらっしゃることでしょう。納税者を甘やかさないといった虐待目線を感じます。
奥の手、「住民税申告不要」制度の活用を・・・
なお、かなり不満がありますが、用意されている「住民税申告不要」制度を活用すれば、半分程度が解決できます。
- 12/27【番外編】譲渡損失の繰越控除、損益通算の税務処理...その3 - 米国株 -『正しいものは美しい』
- 「上場株式の配当等への課税方式の選択-総務省」
- 上場株式等に係る所得の課税方式の選択について|富山市公式ウェブサイト
編集後記
このシリーズは3部作を予定しています。次章で「完」を目指したいので、もう暫くお待ち下さい。今夜は、米国株の年内取引最後の日です。笑っても泣いても、税金は我々を追って来ますので、しっかりと対応しましょう。代表的なネット証券の米国株式取引の案内ページを掲載しますので、確認してみて下さい。
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