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12/14 企業の自社株買いは『悪』なのか?

 またまた、経済原理に疎い岸田首相の発言が12/14の日経平均株価を押し下げています。

 岸田文雄首相は14日の衆院予算委員会で、企業の自社株買いに関連してガイドラインを作る可能性に言及した。

 企業が投資家から資金を調達すべき株式市場が投資家に資金を供給する場所になっているとして、自社株買い制限の検討を求めた立憲民主党の落合貴之氏の質問に答弁した。

 【中略】発言を受け、東京株式相場は午後に入り、下げ幅を拡大し、日経平均株価は一時300円超の値下がりとなった。(ブルムバーグ 更新日時 2021年12月14日 16:36 JST)

岸田首相が自社株買い規制に言及、「ガイドライン」検討-株価下落

『国民は労働者であって、投資家でもある』

 立憲民主党の落合貴之氏の質問内容を、ブルムバーグから次のとおり引用します。

  • 企業が投資家から資金を調達すべき株式市場が投資家に資金を供給する場所になっているとして、自社株買い制限の検討を求めた。
  • 一生懸命働いた売り上げを株価を上げることばかりに使うことは問題だと指摘した。
  • 給与上昇や設備投資ではなく自社株買いに資金を投じる企業を批判した。

 岸田首相の答弁内容を、ブルムバーグから次のとおり引用します。

  • 自社株買いについてはそれぞれの企業判断に基づいて状況に応じて判断していく問題ではありますが、私自身、多様なステークホルダーを重視して持続可能な新しい資本主義を実現していくということから考えました時に、ご指摘の点は大変重要なポイントでもあると認識を致します。
  • 企業のさまざまな事情や判断がありますので、画一的に規制するということは少し慎重に考えなければいけないのではないか。個々の企業の事情などにも配慮したある程度の対応、例えばガイドラインとか、そういったことは考えられないだろうかということは思います。

 政治家独特の言い回しです。竹下登元首相には負けますが『言葉明瞭、意味不明』の最たる内容で、つまり「自社株買いの制限は、新しい資本主義を実現する観点から大変重要なポイントである。」と・・・。しかし、これでもまだまだ意味不明です。
 要は、『「企業が資本を吸い上げる場所」が株式市場であるにもかかわらず、「労働者が稼いだ企業利益」を「自社株買いと称して株式市場へ投じることは本末転倒」である。もっと「社会や労働者に対して稼いだマネーを還元すべき」だ。』と言いたいのです。これ、まるで中国共産党の答弁が如く、社会主義国と見間違うほどです。

NISA、iDeCo(イデコ)の存在意義は?

 NISAとiDeCo(イデコ)は、国が国民に対して資産形成を助成する制度で、具体的に整理すると『老後資金の蓄財を最大目標』に置いています。これらが持つ諸条件を満たして株式投資を行えば、
① 売却差益にかかる利益が非課税。
② 配当が非課税。
③ iDeCoだけは、掛け金が税控除の対象。
となります。

NISA、iDeCo(イデコ)のデメリット

 制度として存在する以上は検討し利用すべきなのですが、功罪相まみえるシステムゆえに『絶対的に有利、メリットが大』と声高く叫べないのです。従前から、日本財務省が絡んでいるシステムは『罠』が一杯です。なお、詳細は省きますが、欠点をザックリと述べると、次のとおりです。
① 制度の終了時、当該銘柄の株価が下落していた場合は目も当てられないこと。
② 基本的に銘柄の乗り換えは不可、投資先企業や投資国の運命と一蓮托生となること。
③ NISAは途中解約が可、iDeCoは決められた老後年齢になるまで解約できないこと。
④ NISAは手数料が不要、iDeCoは結構な手数料が毎期に徴収されること。
⑤ 日本政府の常として、突発的に制度が廃止されたり、規約が変更されて「なし崩しされる危険性」があること。

これらデメリットを打ち消すには?

 ひたすら株価を上げる施策を当該企業だけではなく、税制を含めて政府が企業価値の推進、バックアップし続けなければ、元の木阿弥になります。そして、株価を引き上げる最もダイレクトな方策は、一株利益を増加させる当該企業の『自社株買い』なのです。
 上場企業は、使うあてのない余剰資金を無利子に近い利率で預け入れている場合ではなく、何はさて置いても『随時、発行株式数を減らす自社株買いを断行すべき』です。後日、万一新たな資本が必要になれば、株式を新規発行して資本増強すれば済むことで、企業が利益を過剰な預金の形で保有し続けているのは、サラリーマン重役の我が身可愛さのためだけなのです。

労働者 = 投資家である原理・原則

 株式を購入するのは選ばれた資産家だけではなく、爪に火を点している暮らしている労働者も含みます。政治家にはこの観点、つまり【労働者 = 投資家】がすっぽりと抜け落ちています。我々労働者は「貧乏の烙印」を押されて、政治家に舐められているのです。
 政府の役割は、国民にパチンコや競馬等のギャンブルにうつつを抜かし散在させるのではなく、制度を構築して金に金を産ませる「投資」へ向けさせることに他なりません。『塵も積もれば山となる』の実践を側面支援する役割があるのです。
 そして、労働者の給与引き上げと並行して、平均株価の上昇と預金金利の引き上げが大事です。金利の引き下げは、複利効果が打ち消されるので、労働者にデメリットとなります。何故なら、古より、資金の出し手は常に個人であり、借り手は企業だからです。ゼロ金利などは、企業に肩入れし過ぎた政策と言い切れます。

『生涯現役』に騙されてはいけない

 『生涯現役』という言葉をご存じでしょうか? この四字熟語は、まだ国語辞典に掲載されていないようです。政府やマスコミが盛んにまき散らしていますが、騙されてはいけません。リタイヤは早ければ早い方がベストです。
 好きなことをして暮らすのが人生の最終目的であり、還暦を迎えても尚、生活費のために人に使われ、大事な時間を削られることは『人生が詰んでしまった』ことに等しいのです。 よって、25歳で社会に放り出されたとするなら、60歳迄の35年間、この歳月を利用して資産を膨らませなければなりません。


サラリーマン重役は、自社株買いを望んでいない

 日銀が上場株式をETF形式でたらふく買い込んでいますから、当該企業は『会社乗っ取りの懸念』など微塵も考えなくてよい世相となっています。極論的に言うと、株価が安いまま放置されていても、何も問題ないということです。
 日本のサラリーマン重役は「会社は喰らうもの」で育ってきているので、株主のことなど眼中にはありません。何故なら、私の周りがそうだからです。海外投資家からせっつかれ、執拗に迫られ、しぶしぶ、細々と自社株買いを体裁よく行っているだけです。
 今回、時の首相が「自社株買い」に対して否定的な考えを国会で述べたことは、重大な意味を持ちます。誰が好き好んで莫大な利益を投入して、自社株式を買い戻すもんですか!

編集後記

 夕刻、コンビニで100円ホットコーヒーを飲みながらスマホをいじっていた時、飛び込んできたのが件の国会発言記事でした。それも日本の5大紙ではなく、ブルムバーグの記事です。さすがに、海外報道機関は敏感に反応したのでしょう。この時、私の脳裏をかすめたのは、トランプ前大統領がこの質問を受けたならば、どのように返答したのかな?ということでした。
 何だかんだと書き連ねましたが、この国の幹部は国民に老後資金をどのように準備させるのか、真剣に考えていないことが分かってしまいました。分かっただけでもラッキーです。そうでも思わなければ、ホント悲し過ぎます。


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