米国株 -『正しいものは美しい』

米国市場で「フルインベスト投資」を目指します。

1/30【よもや話】バブル崩壊は資金の引き上げより、レバレッジ解消にある

 世間では「いよいよ、バブル崩壊が始まったのか?」論調が見受けられ、1月5日に12月FRB会合の議事録が公開されるや否や、堰を切ったように米国株式市場が崩れ始めました。主力銘柄が売り状態になっている今の状況です。逆回転現象で、これからETF受難の相場が訪れるやも知れません。以下、独断と偏見に満ちた論調を展開しますので、興味ある方だけご覧下さい。

バブル崩壊とは、株式の時価総額が超絶に減少すること

 株式市場には【時価総額】なる物差しがあります。個別銘柄株、例えばアップル株の時価総額が3兆ドル越えと評判になった「あれ」です。『@一株の株価 × 発行株式数 = 時価総額』の計算式で求められる簡単なもので、上場銘柄全ての時価総額を合計すると、市場ごとの時価総額が算出できます。
 株価が下落し始めるとみるみるうちに時価総額が減少し始めて【株式市場のパイ】が小さくなっていきます。これを「株式市場から資金の引き上げ」と形容して、これに関する記事を至る所で見受けます。では、引き上げられた資金は何処へ向かうのでしょう?

これから、米国個人投資家は借入金の返済に向かう

「株価の上昇が止まる」とみた投資家は、株式売却をすすめて借入を返済、【手仕舞い】を目指します。不要で危険な借入金を返済して身軽になる訳です。いわゆる【レバレッジの解消】です。*米国では、信用取引の金利水準が日本の2倍~3倍と高率です。
 レバレッジとは、例えば「元金1万ドルを種銭として2倍の2万ドルの取り引きを行う」もので、投資の段階で持ち金を2倍に増やした取り引きが行えるのです。【信用の創造】と呼ばれるものです。
 この例では、元々の資金は1万ドルで、信用の創造を利用して2倍の2万ドルを生み出しました。手仕舞って取り引きを閉じると元の1万ドルの現預金へ戻ります。差の1万ドルは何処に行ったの?ではなく、消えてしまったのです。市場全体では膨大な金額に上ります。

他に資金の運用先がない?

 引き上げた1万ドルですが、低利でよければ米国債へ再投資するでしょうし、もう少し利益を狙いたいと考えれば、米国株のディフェンシブ銘柄へ信用ではなく現物(現金)投資するでしょう。前者の債券投資であれば、株式市場から2万ドルが消えますし、後者の現物(現金)投資であれば1万ドルが消えることになります。
 いずれにしても、信用取引(レバレッジ取引)の解消に伴い、市場規模が縮小していくのは避けられません。これに現物株の売りで株価下落が絡むと、数倍の速さで転げ落ちることになります。「株価調整」から「株価下落」、最後は「株価暴落」と命名が変わり、マスコミを賑わすことでしょう。

米国における個人投資家の信用取引は、信用倍率2倍が原則

 米国では日本以上に【信用取引】が盛んで、現物口座と信用取引口座が一体化しているのが特徴です。信用取引を始めるのに特別な条件は必要なく、リスクに関する同意書にサインするだけで、誰でも簡単に信用取引口座が開設できるとのことです。しかし、次の項目をチェックする限り、受ける印象は日本と比べて米国の方が規制が厳しいと思います。

  • 購入 : まず最初は、証券口座にある現金が株式代金に充てられ、不足分が証券会社から融資されます。
  • 売却 : いの一番で、信用(融資)分から自動的に決済されます。*日本のように、現金担保に建て玉したり、信用買い株式を残して現物株から先に売却することはできません。
  • 委託証拠金の50%以内の新規借入が原則で、信用倍率は最大で2倍です。最低委託証拠金率は25%で、これを下回ると【マージコール】の対象となります。
  • マージンコールを受ければ、総投資額の50%以上を借入れに頼って株式を購入した場合は、株式売却で保有率を引き下げるか、現金預入れでこの比率を引き下げる必要があります。対応できなければ、最悪は口座凍結の措置が取られます。

米国市場は機関投資家の牙城、個人はミューチュアルファンドを介して

 米国株式市場は、機関投資家の占める割合が高いマーケットです。売買総額でみると個人投資家は概ね10%位を占めるに過ぎません。
 なお、米国内の個人投資家は、【ミューチュアルファンド】を介して株式取り引き(間接保有)を行っているのが一般的です。運用ファンドマネジャーに手数料を支払って、将来の自分年金用の資産構成を進めているのです。

株価下落の端緒を開くのは、決まって機関投資家

 株価下落の端緒を開くのは、毎度のことながら鵜の目鷹の目で市場を眺めている【機関投資家】連中です。数倍のレバレッジを利かせた取り引きを売却・解消します。逃げ去る時、欧米のマネージャーは損得を度外視して進めます。儲けは次で取り戻す腹積もりです。
 そして、売却だけならまだしも、株価下落の流れを作ると、次は【空売り屋】に変身です。畳みかけて【売り方】に便乗し、最後は母屋を乗っ取ります。お抱えのアナリストやマスコミに情報操作をさせて、市場外まで煽りまくります。但し、失敗例がないこともなく、次の事件では珍しく露わになりました。

ヘッジファンド「アルケゴス・キャピタル・マネジメント」が引き起こした多額損失事件

 アルケゴス・キャピタル・マネジメントは、元運用者であるビル・ホワン氏が運用するファミリーオフィスです。
 ファミリーオフィスとは「超富裕層が外部の金融機関のサービスを利用せずに自ら運営して金融資産を運用する」もので、アルケゴスはホワン氏の個人資産100億ドルを運用していたとのこと。金融機関からの借り入れ(レバレッジ取引)によって実際の運用規模はその数倍に膨らんでいたと思われます。
 2021年3月、これら資金で【デリバティブ取り引き】を行っていたところ、相場が反対方向へ進み出したことで損害が数倍に膨み、融資元を巻き込んで大損害を与えた事件です。なお、【ゼロサムゲーム、自らの損失=他者の利益】なので、儲けた者が必ずどこかに存在します。
 この話には、融資元の某米銀が一目散に売り抜けしたため、出遅れたクレディ・スイスや野村證券等が損失額を公表せざるを得なかったというオチがついています。死屍累々の金融業界ですが、誰も損失を補填する責任を取りません。損失は欠損として処理するだけです。
 このような事例は枚挙にいとまがなく、今でも世界中で行われています。この事例は、突っ込み過ぎて自分の投資額で自分の首が回らくなってしまった一例です。発行額の過半数以上を保有してしまったら、僥倖がなければ売り抜けられないことは相場師ならみんな知っていることなのに。今回は【強欲は善ではなく、理性を狂わせる】好例です。

レバレッジ相場を維持するのには、真水資金が必要

 レバレッジ相場が危険なのは、株価の上昇が止まり始めると【新たなレバレッジ資金が枯渇する】からなのです。確率論的に、誰も借り入れを起こして迄、いつ反転するかしれない銘柄を買い込んだりしません。レバレッジ解消だけが増加して、市場規模が縮小してくるのは必定です。真水資金の投入がないと維持が困難となります。
 頼みのFRBは資産購入を続けて真水資金を提供して来ましたが、昨年11月にはこれを停止して、次は保有する資産売却(資金回収)を検討すると宣言しました。金利引き上げと併せて【逆回転】が始まったのです。
 こうなると平均株価の上昇は望めず、少しずつ株式市場の時価総額が減少するのか、一気に向かうのかは今後の展開次第と言えます。そして、まず打撃を受け始めるのが、安定志向の代名詞である【ETF】ではないかとみています。何故なら、右肩下がりの相場経験が乏しいことと、平均株価がETF価格算出の基になっているからです。特に、インデックス系が要注意かも知れません。


1/30【よもや話】バブル崩壊は資金の引き上げより、レバレッジ解消にある