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3/16【番外編】サウジアラビアが「中国の元建て」の原油取引を検討...

 今朝のブルムバーグには、サウジアラビアが「中国の元建て」の原油取引を検討との報道が掲載されていました。そもそも、統一通貨ユーロが創設された経緯は、対ドルに対して欧州が対抗措置を講じた具体的な行動の現れの結果なのです。

 今も昔も、【原油取引=ドル決済】が事実上固定化されているのが現状です。しかし、かつてユーロがドルと並行して原油取引の決済通貨として勃興し始めた時がありました。本題に入る前、25年ほど昔に戻って事前知識を得ておきましょう。時は、21世紀が訪れる少し前まで時代を遡ります。

2003 年 3 月,イラク戦争が勃発

 古い話で恐縮ですが、2003 年 3 月,【大量破壊兵器保有を理由】として米国は英国など共に中東イラクに攻め入って戦争が始まりました。この戦いは『イラク戦争』と命名されています。


背後には、「ドル」と「ユーロ」の覇権争いが...

 「イラク戦争」が勃発する前の世界情勢は、米国主導の国連がイラクに対して原油輸出を禁じる制裁を発動しています。原油代金のドル使用を禁じる、件の『金融制裁』です。
 これに対して、イラクが原油取引を敵国通貨である「ドル」から欧州統一通貨「ユーロ」への切り替えを迫り、フランスの強い働きかけがあり、2000年10月に国連安保理イラク制裁委員会はこれを承認しています。

 9/11テロの実行犯15人がサウジアラビア国籍を持っていたことで、米国とすきま風が吹き出したサウジアラビアにおいて、原油取引の「ドル建て」を「ユーロ建て」替える動きが顕在化し始めました。更に、ロシア原油取引の「ユーロ建て」の動きがロシアとドイツ間で現われて来たのです。

虎視眈々、米国はイラクを叩く機会を待っていた...

 2011年に終結。結果として、イラク国内に『大量破壊兵器保有など何もない』ことが判明して、批判を浴びたことも記憶に新しい事です。この戦いは、米国の【でっち上げ】だった可能性が濃厚になっています。この戦争の結果、フランスがイラク国内に持っていた原油油田の権益などは廃棄・一新され、米国が新たな線引きを行ったのです。

人民元が、サウジ、ロシア、中国の原油取引を取り持つ?...

 現在、ロシアへの経済制裁を矢継ぎ早に欧米諸国は行っています。ご承知のように、ロシアは原油輸出大国ですし、【敵の敵は味方理論】からすると、唯一の盟友として原油輸入国の中華人民共和国の存在があります。
 更に、イラン原油再開へ舵を切る米国に対して異教徒のサウジアラビアが快く思っていないこともあり、サウジ、ロシア・中国、そしてインドあたりまでが、共に手を握って来ることも予想されます。その第一段階として、サウジアラビアが【決済通貨としての人民元導入を検討】することは、今や論を待ちません。

米国が承知する筈がないが...

 ドル基軸制度の骨子となっているのは【原油取引のドル建て】なので、ドル以外の通貨を決して認めてこなかった米国です。しかし、今回の「ロシアへの経済制裁」が大きな転機となる可能性があります。

 
先日、ロシアの主要銀行は、SWIFTシステムから除外されました。
つまり、基軸通貨であるドル決済網から弾かれた訳で、この場合でも貿易を他通貨で行って決済できればOKなのです。要は、相対取り引きの貿易で、双方が納得する通貨(交換媒体)が見つかれば、原油以外にも流用して決済規模が拡大、流通網が確立されます。

SWIFTシステム

 約200以上の国と地域にある1万社以上の金融機関を接続しているSWIFTは、全世界の海外送金の約半数をカバーし、1日あたり5兆ドル(約600兆円)の決済が行われている。

行きつく先は、中国人民元の勃興?

 原油輸出国のロシア、同輸入国の中国。電子機器輸出国の中国、同輸入国のロシア。これら大国の相互融通は、西側にとって脅威に映ります。ロシアへの経済制裁に中国までを加えることなどできませんから、米国バイデン政権も頭が痛いところです。
 ここに中東の雄であるサウジか加われば、米国は指を咥えて見ていることはなく、何らかの強いアクションに出てくるのは必定です。ウクライナ侵攻だけではなく、世界貿易におけるドル基軸まで余波が広がって来るなら、このロシア・ウクライナ争乱の行く末は更に不透明になって来ることでしょう。

 (追伸)3/18付のロイター配信の次の記事を紹介します。

編集後記

 週が明けてから、原油先物価格が大きく下がっています。1バレル100ドル割れとなり、拍子抜けに映る方も大勢いらしゃることでしょう。更に、地下資源の採掘企業の株価も大きく下落していますから、今、資源高騰から下落への『巻き戻し』が始まっています。 このスイッチを押したのは、中国で急増しているオミクロン株感染者です。都市封鎖を至る所で行っているので、経済が事実上の停止状態になっています。暫くは続きそうですね。
 ウォーレン・バフェット氏が米石油大手オクシデンタル・ペトロリアム(OXY)株を大量に買い増していることからも、一過性の価格・株価調整とみる方が的を得ていると言えそうです。既に保有しているシェブロン株と併せると、ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイ社は、【米国原油生産に楔を打ち込んだのです。我々がエネルギー株の新規買い、買い増しを行うタイミングは、まさに今です。今、やらなきゃ、いつやるの?


3/16 サウジアラビアが「中国の元建て」の原油取引を検討...