米国株 -『正しいものは美しい』

米国市場で「フルインベスト投資」を目指します。

8/04 米国市場の上昇は、短期相場で終わる?...

 一時、ダウ平均が500ドルの上昇をみせる等、米国株式市場は『一過性の過熱状態?』と見られています。これは市場によくあることで、空売りの買戻しを巻き込んで「棒上げ」を演出することになります。
 読者へ裏・奥の事情説明もなく、業界紙面には「平均株価***上昇!」の文字が処狭しと並ぶだけです。こうなると『乗り遅れたくない症候群』の投資家は、「ダウ平均」「ナスダック総合指数」及び「S&P500種」を丸ごと買い進みますので、これら指数に採用されている大型株が、あたかも自然に動いたような【錯覚】を覚えるのです。
 米政策当局者や銀行家は、このような楽観傾向に抑制を掛ける狙いもあって、積極的な発言が目立っています。

今、株上げの基になっている根拠は...

 今、次のような3項目が優勢となって、米国市場を支配しています。まず、先頭を走っているのが「米国10年物債券の利回り低下(債券買い)」です。
 次に、輸入物価の抑制を図りたいから見て見ぬ振りをしていた『ドル高』を、次第に米国当局者は『ドル安』へ誘導し始めるとの希望的観測です。
 通貨トレンド変更で、米国多国籍企業の業績向上が期待でき、新興国からドル資金の離散防止が図れ、世界金融の安定化に寄与するということになります。投資家にとって【都合の良い側面的解釈が大手を振って罷り通って】いるようなものです。

  1. 各種製造指数が対前月比等でマイナス基調となって原油価格が低下。これにより、将来のインフレ上昇が早期に収まる可能性が指摘されていること。
  2. これにより、今年後半以降の米国の利上げ根拠が薄れて来ていることで、10月以降の【利上げ縮小から利上げ停止まで】が想定できるようになって来たこと。
  3. 更に、秋以降の利上げ縮小、停止のみならず、景気の腰砕け防止の点から、米FRBは「次年度には【利下げ】を決断せざるを得なくなって来る」との希望観測が優勢になっていること。

ちょっと「待った」と異を唱えた、米SF連銀総裁のデイリー氏

 このような市場解釈に対して、ちょっと「待った」をかけたのは「米サンフランシスコ地区連銀のデイリー総裁」でした。彼女は次の如く真っ当な正論を主張しました。更に、このまま進めば9月の次期会合では、0.50%の利上げとなる見込みまでを示唆しました。


8/4 米SF連銀総裁のデイリー氏

  1. 今後の利上げに関して、連邦準備理事会(FRB)はインフレに断固として対応する。9月に0.50%の利上げを決定するのは妥当だと考えている。更に「インフレ亢進に歯止めがかからず」「労働市場に減速する兆候が出なければ」、0.75%の利上げが適切な状況になる。
  2. 景気減速に関して、市場はFRBの金融引き締めに反応しているが、FRBが行った措置で「米国経済が影響を受けている証拠は現れていない」とし、「景気減速が完全に明らかになるのはまだ先のこと」になる。
  3. フェデラルファンド(FF)金利に関して、今年末までに同金利が3.4%に到達することが「妥当な水準」という認識を表明。今、同金利が「抑制的と見なされる水準」へ達したとは確信していないとし、現在の2.25 - 2.50%よりも3%が抑制的な水準という考えを示した(これから、1%程金利が上がって然るべき...)。

これって、市場の楽観的な行動に楔(くさび)を打ち込んだのも同然...

 最後に、同女史は「良好なスタートを切り、ここまでたどり着けたことに満足している」としながらも、40年来の高水準にあるインフレ率を引き下げるにはまだ「長い道のり」が残されているとしました。

 そして、インフレを抑制達成への連邦準備理事会(FRB)の取り組みは、まだ道半ばで程遠く、物価安定に向けてFRB当局者は、なお「断固として、完全に一致団結している」と述べ、米国市場参加者の楽観的な投資行動に太い楔を打ち込んだのです。

更に、ミネアポリス連銀総裁も吠えた...

 更に、米ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁も3日、連邦準備理事会(FRB)が来年、利下げに転じる可能性は極めて低いと述べました。続いて、米リッチモンド地区連銀のバーキン総裁も…。

 カシュカリ総裁はニューヨークで開催された金融規制会議の一環で行われたイベントで「FRBが来年に利下げに転じるとの予想が金融市場の一部で示されている」とし、「あり得ないとは言いきれないが、インフレの基調的な動きを踏まえると、そのような可能性は極めて低い」と述べた。

 その上で「利上げを継続し、インフレ率が2%に戻ると強く確信できるまで据え置く」というシナリオが最も現実的と述べた。

8月4日のトピックス

 ダウ工業株30種平均は3営業日ぶりに反発し、前日比416ドル33セント(1.3%)高の3万2812ドル50セントで終えています。ナスダック総合株価指数も3営業日ぶりに反発、前日比319.401ポイント(2.6%)高の1万2668.159と5月上旬以来の高値で終了しています。



 3日に米サプライマネジメント協会(ISM)が発表した7月の非製造業景況感指数が市場予想に反して上昇(ISM非製造業指数は56.7と4カ月ぶりに上昇し、市場予想(54.0)も上回った)し、米景気の底堅さが意識された模様です。

「乗り遅れ」と「焦り買い」

 相場は午後に上昇の勢いが強まり、市場では「6月にかけて株式への投資配分を大きく引き下げていたヘッジファンドなどが7月の相場上昇に乗り遅れ、焦って買いを入れている」(ミラー・タバックのマシュー・マリー氏)との指摘が吹聴されるなど、【関係者への煽り】も随所に見られます。

MYポートフォリオ

 有名どころの銘柄は急騰し始めていますが、総じて古参のディフェンシブ銘柄や高配当銘柄は「置いてきぼり」となっています。それはそれでOKなのですが、何となく『寂しい』ものです。


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編集後記

 「米国株式市場の急激な株価戻し」に異を唱える金融政策者(FRBメンバー)の意見を取り上げました。私の拙い解釈では、皆、異句同様に「FRBは金融政策の変更を始めたばかりで、何も結果が現われ且つ見えていない。次月以降も、引き続き同様の対応を粛々と行っていくだけで、政策変更や政策転換などは露ほどのかけらも検討していない。」的な発言主旨でした。

「正夢」が枕元に立ったり・・・

 始まったばかり、そうでしょう。私も市場は「過剰反応」と見ていますが、『嘘も100回程言えば、本当になったりする』ので、8月の暑い盛り故に「正夢」が我々の枕元に立ったりして・・・。

死語になったか?「FRBに逆らうな…」

 ほんの数カ月前までは「FRBに逆らうな…」が、市場参加者の合い言葉でした。FRBが『待てと言えば待った』ものです。しかし、米国のインフレ見通しを「一時的なもの…」と解釈して「金融緩和を続け過ぎ、金融政策の変更時期が遅れてしまった」との反省があったことから、昨今、FRBを蔑ろにする傾向があるように見えてしまいます。

弱り目に祟り目


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