2/26【番外編】高利回りの外貨MMFを利用する際の留意点...
1/31~2/1に開催された連邦公開市場委員会(FOMC)で、FRBが金利引き上げを決めた後であっても、なかなか米国の市中金利が上昇しない状況が続いていました。
しかし、ようやく取り巻く市況環境とFRBによるインフレ抑え込みの本気度が伝わり、昨今は急激に米国金利が上昇(債券価格が下落)、米国株が安値に沈み、連れてドル・円が『ドル高』『円安』に大きく振れ始めました。今や、日本だけが低金利政策の維持、金融緩和を続けている状況です。
【 債券 】 前日比 高値 安値
* 2年債利回り 4.81 +0.11 4.84 4.67
*10年債利回り 3.95 +0.07 3.97 3.85
*30年債利回り 3.93 +0.05 3.96 3.85
*日米金利差 3.44 -0.44
円貨にしがみ付く日本人は、人生が丸損・・・
日本国内の円貨利息(金利)が長期債で0.5%程度であるのと比べると、インフレの程度の差が有れども、米国と資産形成に大きな差が生じるのが明らかになって来ています。
円を通貨ベースに生活している日本人は、ドルを通貨にしている米国人と比べて明らかに【人生における資産形成が丸損】なのです。何故なら、人には寿命があり、50年後や100年後に勝利したとしても仕方がないのです。
証券会社お勧めの「外貨MMF」は、もういいよ?・・・
SBI証券会社で米国株取引を行っている方なら、次のメッセージをご覧になったことがあるでしょう。「外貨でのお預り金には金利がつきません。」です。
我々が「米国株買い外貨」を預けているのは「SBI証券会社」です。通貨創造権のない単に我々からドル資金を預かるだけの企業です。資産を増やしたければ、我々が行動を起こす必要があります。
鈍感な方でも、繰り返し上記メッセージを目にすると、「外貨建MMF」へのリンクをクリックして、次のような高利息の『預金モドキ』があることを知ってしまいます。
目を凝らすと、今のご時世にも拘わらず、日々の預入利率が何と『3.86~4.07%』の高利回り商品です(2023/02/24)。あなたの不幸は、ここから始まるのです。
外貨建MMFは、日々単位で利息を生む
この「What is 外貨建MMF?」に関しては、数多の証券会社が専用ページで紹介し、多数の投資家が独自のWEBサイトを立ち上げ、ブログで解説記事を掲載されていますので、詳細情報は簡単にゲットできます。よって、このブログでは「おさわり程度」に収めます。
肝心なのは、税金の取り扱い・・・
SBI証券会社では、外貨建MMFの専用ページ(外貨建MMFの特徴)に次のような記載があります。源泉徴収を行う国税、地方税のことを表記しています。
2016年1月1日より、外貨建MMFの「分配金」・「譲渡損益」・「償還差損益」は20%(国税15%、地方税5%)の「申告分離課税に変更」されました。これにより、特定口座で株式や投資信託との「損益通算が可能」となりました。
なお、2013年1月1日から2037年12月31日までは復興特別所得税の対象となるため、 20.315%(国税15.315%、地方税5%)の税率となります。
「分配金」
「分配金」とは「運用利回りの分配金」の意味です。例えば、100ドルを預けて5%の運用であれば、年間5ドルの分配金を投資家が得ます。この5ドルに対して、20.315%が徴収されます。
「譲渡損益」
「譲渡損益」とは、譲渡時の価格から取得費を差し引いた額です。外貨建MMFは、月単位で分配金を支払い(課税)、元本と税控除後の分配金を翌月に「新元本として再投資」する仕組みです。元本割れがなければ、短期間であろうと元本は初期元本からプラスになっているので、譲渡損益は課税対象となり、20.315%が徴収されます。
「償還差損益」
次は、「償還差損益」です。簡単に置き換えると「為替差損益」になります。米ドルをSBI証券に外貨預け入れ処理で入金した投資家が、外貨建MMFを「ドル建て」で購入し、「ドル建て」で売却した場合、外貨建MMF売却時に『この外貨建MMFを購入して以降、円安・円高に振れていようがいまいが、影響はなし』と考えるのが普通人の感覚です。しかし、税の対象の全てが、円貨に置き換えて源泉徴収されるのです(下図Q&Aを参照)。
2016年から為替差益は源泉徴収扱いに・・・
資金を「米ドルから円貨に換えて」受け取るならば「円貨に置き換えて...」を理解できますが、ドルのままで受け取るのですから「?」Or「対象外なのでは?」です。しかし、国税庁の見解、解釈は異なります。
つまり、ドルからドルで受け取る場合であっても、基準時点(今回では売却時点)のドル貨・円貨に置き換え、為替差益損を損益計算することに法令を改めたのです。従前(2015年まで)は、年20万円まで非課税になる「雑所得」の税区分でした。
次の一覧画像はSBI証券のQ&Aページのキャプチャーです。残念ながら、この記述(円貨にて徴収します)は、外貨建MMFの概略ページに掲載されていません。
外貨で資産運営する場合の具体例を示すと・・・
例えば、1ドル=100円で外貨建MMFを利回り5%で100ドル分購入。1年後、105ドルの元本となっている外貨建MMFを、1ドル=150円のドル・円で売却したとすると、「譲渡損益 = +5ドル」と「償還差損益 =(105ドル×150円)-(100ドル×100円)」が課税対象となり、20.315%が源泉徴収されます。
具体的には、計算式 : 750円 +(15,750円-10,000円)= 6,500円 × 20.315% = 1,320円(源泉徴収税)が、投資家の支払う税金です。ドル貨で持っている状態でも...です。
年間で▼3.8ドルの運用損が発生・・・
5%の利回り外貨建MMFで100ドルを1年間運用して得た成果は5ドル、そして1,320円(8.8ドル)の税を支払った、という結果です。円安が進行し、▼3.8ドルの運用損が発生したのです。もちろん、日本の国税庁が親元ですから、米ドルではなく日本円で納付するのです。この時は、基点時の外貨の買取価格「TTB」で計算されます。
外貨で資産運営する場合、既に「取り扱い注意の商品」に変貌した・・・
突き詰めると、外貨(米ドル)のままで資産運営する場合、これから「円安に向かう」と思う時、言い換えれば「現状は円高」と思う時は、外貨建MMFを購入してはいけません。上記の例題のようにマイナス運用となる危険性があります。
嘗て、2016年までは「外貨建MMFは、為替差益を狙って円高の時に組成すべき」商品でしたが、今や逆転して「外貨建MMFは円安の時こそ、組成すべきもの」と、税金の取り扱いが性質(タチ)を180度変えたのです。
結論
「ドルで外貨建MMFを購入し、ドルで売却代金を受け取る場合」は、上記の例題のように損失額が発生する可能性があります。よって、証券会社がPRする「外貨でのお預り金には金利がつきません。」を鵜呑みにし、安易に株式投資用の米ドルを「外貨建MMF」へ預け入れると、為替動向によっては、意に反して損失額が発生してしまうのです。
① ドルで外貨建MMFを購入し、ドルで売却代金を受け取る場合
外貨建ては為替の影響を受けるリスクがあることを頭に入れておきましょう。売却するときよりも投資したときの方が円安だった場合は、為替レートの差によって「損失が発生する可能性」があります。
② 円貨で外貨建MMFを購入し、円貨で売却代金を受け取る場合
外貨建てMMFを購入する際に為替レートを確認しておくと、さらに好条件での取引も可能です。円高のときに購入して円安の時に売却すれば、為替変動による差額での「利益が発生する可能性」があります。
このように、待機資金の運用に際しては、外貨(米ドル)であるか否かの違い、投資家の立ち位置の違いで、得る結果が180度も異なってしまうのです。為替動向に関しては奥が深く、一寸先まで見通すのが常に困難ですから、頭を悩ませます・・・。
編集後記
「美しいバラには棘がある、美味しいものには裏がある」の譬えどおり、世の仕組みには裏表があります。「外貨建MMF」自体には瑕疵も少なく、素晴らしい商品です。
しかし、古今東西、為政者は国民から徴税することを鵜の目鷹の目で狙い続けて、自らの都合に沿うように実行します。その結果、素晴らしいものでも姿形を変えてしまうのです。
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