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3/12【番外編】この逆境下、得てして脚光を浴びる『金融銘柄』...

 10日、米西部カリフォルニア州の金融当局は、IT企業やスタートアップ企業、ベンチャー企業を主な取引先とする「米中堅銀行シリコンバレー銀行(カリフォルニア州サンタクララ)」が、債務超過に陥り、経営破綻したと発表しました。同銀は「SVBファイナンシャル<SIVB>」傘下の銀行部門になります。


3/12【番外編】この逆境下、得てして脚光を浴びる『金融銘柄』...1

倒産まで、僅か2日間・・・

  • 3月9日(木)、同銀行のCEOが「銀行資本の増強を図るべく、同銀への増資を募る」を発表。しかし、関係者の「けんもほろろな対応」に苛(さいな)まれて「断念」した経緯が報じられました。
  • 3月10日(金)、米国株式市場が開く直前、株式取引の一時停止が発表されました。
  • 同日、シリコンバレー銀行が破綻したとの報道が流れ、米連邦準備制度理事会(FRB)と米連邦預金保険公社(FDIC)の管理下にあると公表されました。
  • 遡る3月8日(水)、210億ドルの有価証券を売却して2023年第1四半期に約18億ドルの税引き後の損失が発生することを公表。この僅か2日後、事実上の倒産となったのです。
  • 3月11日(土)、「米連邦準備制度理事会(FRB)と米連邦預金保険公社(FDIC)は、経営難に陥った銀行の預金保護に活用できる基金を創設する検討に入った。」と報じられました。この基金は、ベンチャーキャピタル(VC)や新興企業向けの銀行の健全性を巡って動揺が広がる中、緊急時対応策の一部になると云われますが...。
  • 3月12日(日)、バイデン大統領はシリコンバレー銀行の破綻を巡り、「11日にカリフォルニア州のニューサム知事と協議した。」と報じられました。

シリコンバレー銀行は、全米16位の規模・・・

 米紙報道によると、破綻した銀行の資産規模としては、2008年のリーマン・ショック時に破綻したワシントン・ミューチュアルに次いで米国史上2番目となるとのことです。

  • シリコンバレー銀行の昨年末時点の総資産は2090億ドル(28兆2150億円)、全米16位の規模。預金残高は1754億ドルでした。この規模の銀行がなす術もなく圧死です。

 魔訶不思議なのは、銀行間で「必要な短期資金を融通し合うシステム」の対応が、全くと言っていい程に伝わって来ないことです。
 そして、破綻するまで、監督官庁が「資金融通」の手を差し伸べて『破綻を避ける、延命を図った形跡』があったのか、なかったのか? 全く窺い知れないことも腑に落ちません。

 シリコンバレー銀行を巡る裏側で一体、何が行われていたのか、今も行われているのか?大変興味が尽きないのです。

  • 破綻の理由 : 米国メディアは「利上げによって実勢価格が下落した債券売却で損失が発生し経営が悪化、法人顧客から預金の引き出しが相次いだこと」等が、主な原因だと報じています。

帳簿上の評価損が、実損へ変貌する・・・

 いずれの銀行でも、FRBの利上げによって「過去に発行された利率の低い債券」には、帳簿上ですが「評価損が生じて」います。しかし、債券期日の満期日まで保有すれば、「元本 + 利息」を受け取ることが出来るので、何も問題ありません。
 但し、現金化に迫られて市場で任意売却したりすると、一転して『評価損から実損へ』と取り扱いが一変します。更に『資本の増強・増資』まで踏み出せば、「預金の引き出しを行って下さい」と言わんばかりです。
 金融機関たるもの、存亡の危機ほどの必要性に迫られることがない限り、このような暴挙に出ることはありません。ここに至るまで、我々の与り知らぬ、何か『後ろめたい闇』が隠れていることなのでしょう。


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イギリス法人も、「破綻に向けた」手続き申請へ

 英国の中央銀行であるイングランド銀行は10日、経営破綻した「シリコンバレー銀行」のイギリス法人について、破綻に向けた手続きを裁判所に申請すると発表しました。同銀のイギリス法人は、金融当局との協議の結果、破綻は12日の夕方になるとしています。

スタートアップ企業にとって、「ご用達銀行」であった・・・

 同銀行の資料によると、昨年1年間にベンチャーキャピタル(VC)が出資するテクノロジーやヘルスケア関連の企業がアメリカで行った株式の新規公開の内、44%が同行の取引先だったということです。
 1983年の設立以来、この銀行は、主にテクノロジー関連のスタートアップ企業や、スタートアップ企業に出資するベンチャーキャピタル(VC)向けに融資してきたことで知られていました。

金融緩和を追い風に業績を拡大した『アダ花』・・・

 FRBが新型コロナウイルスの感染拡大への対応として大規模な金融緩和策に踏み切った2020年3月以降、スタートアップ企業などの取引先の預金が増加。併せて、株価も2倍以上に高騰していたのです。
 同行の資料では、昨年3月末時点の預金はその2年前の2020年3月末と比べて3.2倍に急増していました。こうした預金は、何故か国債等の債券で運用されていたのでした。

ベンチャーキャピタル(VC)と二人三脚の荒稼ぎ・・・

 同行の資料の至る所で、ベンチャーキャピタル(VC)の名称が現われます。結局、シリコンバレー銀行は、VCの資金を取り込んで「のしあがり」、最後はVCから資金を引き出されて「潰れて」しまったことになります。これって、何処にでも見かける、バブル期に咲いた典型的な『アダ花』です。

関係者への悪夢は、非関係者にとって「甘い蜜」となる...

 他行への影響に関して、12日の時点では、概ね「限定的」との見方が主流になっています。「米国の利上げで、金融機関が保有している債券の評価額は下落しているが、シリコンバレー銀行のように『資金繰りのため、売却せざるを得ない状況に追い込まれなければ、損失は確定しない』ので、信用不安が広がることにはならない」。
 更に、「今回の経営破綻の背景には、シリコンバレー銀行が積極的に融資していたテクノロジー関連、スタートアップ企業の業績不振があるのではないか」との見方も根強くあります。裏表をしっかりと見極めなくてはいけませんが・・・。

今週は、さしずめ「どの金融銘柄を拾い上げるか」です・・・

 倒産劇の影響が限定的、あるいは皆無であるとするなら、「連れ安」で売られている同セクター銘柄を拾い上げることは、「非関係者にとって甘い蜜」となります。一度、検討されてはいかがですか。次表は、金融セクターから拾い上げた株価データです。これら以外にも下落率で激しく落ちている銘柄がゴロゴロあります。


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編集後記

 シリコンバレー銀行は、他の金融機関から吸収合併されます。日本時間で月曜日午後11時30分が株式市場のオープン時間なので、ここを目指して調整中の事でしょう。
 映画「ウォール街2」では、リーマンショック時の交渉場面が映画ストーリーとして描かれていました。政府高官、金融機関関係者が集まる秘密会議の席上、某金融機関の吸収合併交渉でかわされたのが、
「株価2ドルで...。」
「いや、4ドルでないと駄目だ...。」
「2ドルしか出せない。」
「数日前まで、数十ドルもした株価だぞ...。3ドルで、どうだ?」
「2ドルだ。2ドルが限度だ!」
 この後、吸収合併案はまとまらず。某金融機関CEOは、地下鉄のホームに入って来る電車の先頭車両へ飛び込むのです(失礼、ネタばれ)。

SIVB株価、39.5ドル/株の記録

 10日のNY市場の時間外取引で、「SVBファイナンシャル<SIVB>」の売買が成立した株価として、39.5ドル/株の記録が残っていました。吸収合併は、SIVB傘下の銀行なので、これらはあくまで参考価格ですが・・・。


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