米国株 -『正しいものは美しい』

米国市場で「フルインベスト投資」を目指します。

9/24 積極財政に転換?の英国、株安を世界市場へばら撒く...

 「今日の株安の原因は、何か?」と問われれば、私は、間髪を入れずに『英国が25.5兆円経済対策と1972年以来の大型減税を実施すること』と返答します。

英国は、世界第2の対外純債務国…

 何と言っても、イギリスはアメリカに次ぐ世界第2の対外純債務国(債務残高は2021年末時点で113兆7000億円)です。ドルのような基軸通貨国でもないイギリスの金融市場が、それでもこれまで安定していたのは、ロンドンの金融街シティが国際資本フローを集めることができていたからです。信頼がなくなれば、イギリスはお終いなのです。

WHY?

 もちろん、米国FRBの利上げに端を発しているのは間違いないんですが、何故に「この時期に、マネーの持ち合わせのない『英国』が、こんなことをするのか?」でしょう。案の定、ポンド通貨と英国の国債価格が急落しています。以下、ブルムバーグからの引用です。


9/24 積極財政に転換?の英国、株安を世界市場へばら撒く...1

  トラス英政権は1972年以来の大規模な減税を打ち出した。景気への長期的な効果を狙い、個人所得税を引き下げ、予定していた法人税率引き上げは撤回する。

  クワーテング財務相は不動産購入時の印紙税も削減。個人や企業が直面する光熱費の高騰に対し、今後6カ月間で600億ポンド(約9兆5000億円)を拠出して支援することを確認した。

  また高額所得者に対する45%の所得税最高税率を廃止し、基礎税率も20%から19%に引き下げる。ロンドンの金融街シティーに対する規制自由化も約束し、バンカーの賞与制限は撤廃する。(中略)


  この経済対策の費用は5年間で1610億ポンド(約25兆5000億円)に上る。すでに大規模な英国の政府債務が管理不能な状態に陥るとの不安を背景に、23日の市場ではポンドと英国債が大きく売られている。(中略)


  英中銀は22日に0.5ポイントの利上げ決定を発表し、需要過剰の兆しが見られれば、より急速な行動が必要になると示唆していた。

  短期金融市場は英中銀が11月に予定する次回の金融政策判断で、政策金利を1ポイント引き上げると織り込みつつある。


  英国債は急落し、政府の追加借り入れは経済成長にほとんど寄与せず、物価上昇は加速させると市場関係者が考えていることを浮き彫りにする。英中銀金融政策委員会(MPC)の元メンバー、マーティン・ウィール氏は、政府の経済対策は「失敗に終わる」と予想、ポンド売りを引き起こすと警告した。(ブルムバーグ 2022年9月24日 3:48 JST)

トラス英国首相、姫君の御乱心・・・

 八方美人とは「誰からも悪く言われないように、要領よく人と付き合う人」という意味です。言い換えると、「周囲の空気を読んで、その中で自分が嫌われないような発言や態度を取ろうとする人のこと」を意味します。
 で、この人とは誰なのかと問われれば、それは、次の写真にある「メアリー・エリザベス・トラス英国第78代首相、保守党党首」のことです。彼女は、これら政策を掲げてジョンソン前首相辞任後の首相選で当選したのです。
 彼女にしてみれば、「選挙公約なので邁進するだけ」なのでしょう。お付きの者たちは皆、本当にやるとは思ってもみなかったのでは?

英国内からも、批判が続々噴出...

 英シンクタンク「財政研究所(IFS)」のポール・ジョンソン所長などは、「この計画は、上昇を続ける金利で多額の借金をし、政府債務を持続不可能な増加軌道に乗せた上で、経済成長が改善するよう期待するもののようだ」と一刀両断。
 更に新戦略によって高インフレの中で需要が増加すれば、物価がさらに高騰するリスクがあると述べた。また、イングランド銀行は同時期に政府とは真逆に向かっており、450億ポンドの減税措置に対応するための利上げに踏み切る可能性が高いと話した。
 最大野党・労働党のレイチェル・リーヴス影の財務相は、「保守党は生活費危機を解決できない、なぜなら保守党こそが生活費危機だからだ」と批判した。


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パウエル議長は「需要滅失」、トラス首相は「景気浮揚」を図る...

 同じ英語圏の姉妹国で、目指す先が全く正反対というのは「投資家」にとってサッパリ意味不明な出来事に映ります。4文字熟語を用いて、この二人の施策を言い表すと、次のようにチグハグな考え、対応に行き着くのです。投資家は腰を引いて身構えるでしょう。

  • パウエル議長は「需要滅失」を強く推し進めて、物価安定を早期に取り戻す。そのためには、少々の犠牲を厭わず、金利引き上げを粛々と続けていくと表明。市場は、年内だけでも、11月と12月の利上げを織り込み始めています。
  • 同議長は「年内に4%を超える政策金利が現われるであろう」と表明しました。
  • トラス首相は「景気浮揚」を強く推し進め、景気上向きを目指す。そのためには、大型の個人・法人減税の実施、個人や企業への光熱費支援(金)を織り交ぜ、大量の英国債増発を行う。
  • 英中銀は、22日に0.5%の利上げを決定済み(年1.75%から2.25%、8月の消費者物価指数が前年同月比9.9%)。「需要過剰」の兆しがあれば「追加利上げを厭わず」の姿勢を取る。市場は、本年11月にも「英中銀が政策金利を、更に1%引き上げる」と織り込み始めています。

 金利引き上げは、「市中景気を鎮める・抑えるため」に行うと学校で習いました。個人・法人向けの減税、インフラや生活にかかる支援(支援金支給)は、「景気浮揚のため」に行う施策だと、こちらも教わりました。

英国政府と英国中銀の対応は、チグハグで同床異夢...

 どのように見ても、英国政府と英国中銀の対応はチグハグ、同床異夢です。訳が分からないですが、減税や支援金支給をトラス首相が自らの政権を樹立するための『餌』と解釈すれば、理解し易い話になります。所謂、バ・ラ・マ・キです・・・。日本では、このようなことは財務官僚の反発・離反で実現しません。東京地検特捜部まで動員されるかも...。


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9月24日のトピックス

 ダウ工業株30種平均は4日続落、前日比486ドル27セント(1.6%)安の2万9590ドル41セントで終えています。6月につけた年初来安値を更新し、約3カ月ぶりの3万ドル割れとなりました。ダウ平均は20年11月下旬以来の水準に沈んでいます。
 米主要株価指数は軒並み下落して、S&P500種株価指数は前日比1.7%安、ナスダック総合株価指数は1.8%安となりました。


9月24日のトピックス

ダウ平均も弱気相場入り

 ダウ工業株30種平均は取引時間中に一時2万9250ドルまで下落、1月につけた過去最高値(3万6799ドル)を20%超下回る「弱気相場の領域に入った」模様です。債券市場では米長期金利が12年半ぶりの水準に急上昇しています。

地下資源銘柄の下落が目立つ

 特に、景気敏感銘柄とされる「原油・鉱物系銘柄」の株価下落が目立った一日でした。ロシア・ウクライナ紛争もそろそろ賞味期限切れとなったようで、各報道にも反応し難くなって来ています。
 景気減退に伴う消費量減少が懸念され、一旦、手持ち株の整理が優先された模様です。金利高と株価下落のダブルパンチは、将来の新規鉱山の開発等にも影響を及ぼし、この傾向が続くと安定供給に懸念が出始めることでしょう。

値下がれば、将来の「値上がりマグマ」が助長される?

 気持ちよく、且つ大幅に値を下げたので、ある面すっきりしたのではないでしょうか?
 私など生粋の楽観主義者ですから、米国株の平均株価が下がれば下がる程、欧米人特有の「値上がろうとする煮えたぎるマグマ」が市場全体で助長されると解釈しています。下げがきつい程、先々が楽しみです。

心配など不要...

 何故なら、米国民も米政府も、株式市場を発展・拡充させることこそが、安定した自分達の未来の住処となることを、確信しているからです。力ずくで落とされた「米国株の復元力」は強力なので、何ら心配など要りません。

編集後記

 株式を売りたい投資家がいるから、株式の値が下がるのではなく、下がって欲しくないとの思いを抱く投資家がいて(大概の投資家はそうですが...)、その投資家を不安にさせることで保有株式を安値で放出させ、自分たちが売った株価以下に値下がった段階で、その株式を買い戻して相当の利益を得る。つまり、儲けたい投機家がいるから株式が下がるのです。

売りと買いはイーブンです...

 このためだけに、猛烈に株式を投げ売りするので、ここ数日間のように際限なく株価が値下がります。例えば、「100万株の売りが成立」したという事は、「100万株の買いが成立」したことに等しいのです。

要は、売らせなきゃいいんだ...

 思い起こせば、数年前の夏頃、中国株式が猛烈に下げ始めた数日後、市場オープン前に中国当局の責任者が「要は、売らせなきゃいいんだ」的な発言を行って、市場に売買規制を敷いたことがありました。
 各国から一笑に付されてしまい、混乱の中で僅か一日で撤回。売買規制は論外ですが、私は、ある面で事の真実を突いているんじゃないかな、と思った次第です。


では、楽しい週末をお楽しみ下さい。


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