10/16 米銀の7~9月期決算、利ザヤが景気減速より勝る...
注目の米国主要銀行決算が10月14日から始まっています。対象期間は2022年7月~9月です。総じて発表後、当該金融機関の株価は上昇していますが・・・。
米国は銀行の決算発表が先陣を、日本勢は殿(しんがり)を・・・
米国では多国籍企業の雄である主要な金融機関が、並みいる企業群の先陣を切って「決算及び業務見通しを公表する習わし」があります。
この点、日本の金融機関は全くの正反対で、銀行や損保などの決算発表は『殿(しんがり)』が定位置です。何故なのか、分かりません・・・。
米金融大手JPモルガン・チェース
ジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)率いる最大手の米金融大手JPモルガン・チェースは、14日に自社グループの「第3・四半期決算」を発表しました。
市中金利上昇の恩恵を受け、債券トレーディング収入と利ザヤ収入の増加が見られていますが、投資銀行部門の収入は43%減の17億ドルと減少、赤字には陥っていないものの、先行き不透明感が強く、8億800万ドルの貸倒引当金を積み増したとのことです。
しかし、金利収入の増加が大きく、1株利益は市場予想を上回った模様です。
- 総合的には、17%減益となったこと。
- 純利益は97億4000万ドルであったこと。
- 純金利収入(NII)は51%増加し、通年の金利収入見通しを約35億ドル引き上げ、615億ドルとしたこと。
- 債券トレーディング事業が22%増収となったこと。
- JPモルガン17%減益、貸倒引当金積み増し 金利収入増で予想上回る | ロイター
米金融モルガン・スタンレー
一言で申し上げると、投資銀行グループ収入が前年同期比55%減と落ち込んだことで、純利益が29%減の26億3千万ドル(1株当たり1.47ドル)。全社の収入は12%減の130億ドル。アナリスト予想は132億ドルでした。
金利収入が利上げの恩恵を受けたウェルスマネジメント部門の収入は3.1%増の61億2千万ドルでしたが、新規貸し付けは52%減でした。金利が上がれば、企業の新規借り入れが減るのは当然のことですから、経済市況の悪化は推して知るべしです。
米銀大手シティグループ
純利益が34億7900万ドル(約5150億円)と前年同期比25%減少しています。貸倒引当金は3億7千万ドル計上、貸倒損失を合わせた不良債権処理費用(信用コスト)は13億6500万ドル計上(8四半期ぶりの高水準)しました。前年同期は景気見通しの改善を背景に、引当金11億ドルを何と戻し入れていました。雲泥の差です。
投資銀行部門の収入は前年同期比64%減少。株安や景気減速懸念で企業の資金調達やM&A(合併・買収)が停滞した模様です。一方、金利上昇を追い風に利ざやが改善し、純金利収入は増加(前年同期比18%増の126億ドル)しました。
何だかんだと言っても、「銀行業」は確実に儲かる商売...
JPモルガン・チェースのダイモンCEOは、自己資本拡充のため停止していた自社株買いについて「23年の早い時期に再開することを期待している」と述べました。
まだ、やるのかいなぁ? 欧米人は「自社買い=自己保有株の価値増加」に並ならぬ執念すら感じます。
銀行は「棚から牡丹餅」、個人投資家は「棚から牡丹餅は落ちてこない」
モルガン・スタンレーのシャロン・イェシャヤCFOは「厳しい環境の中での堅調かつ安定した業績だ」と述べるなど、FRBによる金利の引き上げががまんざらでもない口調でした。総じて、なんだかんだと言っても、金利の引き上げは銀行家にとって「棚から牡丹餅」ですが、個人投資家には「棚から牡丹餅は落ちてこない」が正解です。
FRBの金利引き上げ、金融機関は『通貨の創造利権で大暴れ』・・・
銀行業務の骨格である貸付金利(利ザヤ)、金融機関は自身が有する『通貨の創造利権で大暴れ』です。1千億ドルの預金残高であっても、9倍相当の9千億ドル融資を実行するのですから・・・。黙っていても相当な利益が転がり込む構図で、「ホント美味しい果実」です。結果、FRBに足を向けては眠れません。
反面、止むを得ずに増加した利息を渋々でも支払わざるを得ない民間企業にとっては、銀行への支払金利が増加するだけで、自社に何もメリットはないので痛し痒しです。
企業は値上げで、最終ユーザーへ価格転嫁する...
しかし、米国企業はユーザーへ必ず価格転嫁しますので、何時でも消費者が最も損失を被るのです。そして、損失を被る者が「銀行預金や株式等の資産を保有していない」のなら、全ての不利益が覆いかぶさります。『金利の引き上げは、資産のない消費者を貧乏にする』これは、いつの世も万国共通です。
編集後記
ざっくりと、金融機関の親玉であるFRB(米連邦準備制度理事会、米国の中央銀行)による『何だかんだの利上げ』効果を7月~9月の3カ月決算でチェックしてみました。想定以上に「利ザヤ」によって利益が増加しているので、当然、1株当たりの株価は上昇...。関係者は笑いが止まりません。
銀行の親方FRBが、市中金利を決めるのは極めて公私混同・・・
私が「何だかんだ利上げ」と定義したのは、「インフレ上昇 = 金利引き上げ」施策を判で押したように中央銀行が行い、政府が債券を発行して市中から紙幣を掻き集め、予算書で紙幣をばら撒くのが今の世の中です。
嘗ての金本位制だの、健全財政だの、といった筋の通った財政規律もなく、金融機関へ利益を向かわせるのが「利上げ」の本質と看破しています。
私は、「金利を引き上げることで不況風を強制的に吹かせ、『消費者=雇われ労働者』を不当に底辺へ押し下げて、不利益を生じさせているのではないか?」と長年に亘り、この種の疑問を持っているのです。
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