米国株 -『正しいものは美しい』

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3/20【番外編】クレディ・スイスの「劣後債(AT1債)」に関して...

 金融立国スイス、金融大手UBSによる同業のクレディ・スイス・グループの買収が19日、決まったとの報道が相次いでいます。クレディ・スイス株の下げが加速してから買収合意に至るまで、凡そ1週間というスピード決着の背景には、同行の「顧客預金の流出」という逼迫した事態があった模様です。預金が逃げ去ると、さすがの銀行も『ご臨終』です。


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そもそも「劣後債」とは?

 劣後債とは、正式名称を「劣後特約付社債」と言い、企業が発行する一般的な社債に比べて元本と利息の支払順位が低い社債のことを指します。


 この「劣後」とは、「他よりも劣っている」という意味であり、債券の発行元である企業が破綻した場合に、他の債券よりも返済順位が劣るということを指します。

 これは、劣後債特有の「劣後特約」によって生じるものです。このように劣後債は、一般的な債券に比べてリスクが高くなる分、利回りは高く設定されています。


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 一般的な社債は、満期まで一定の利子が付き、満期後の償還時になると、その発行元である企業が投資家から借りたお金を返済できれば元本が戻ってくる仕組みです。

 しかし、発行元の企業が破綻してしまった場合、残余財産が少ない場合すべての債券の返済ができない可能性があります。その際に、最も返済の順番が遅いのが劣後債なのです。


 劣後債は、企業からの法的弁済順位が「普通車社債よりは低く、普通株式よりは高い」という中間の性質を持っていることから、『ハイブリッド証券』と呼ばれます。(富裕層向け資産運用のすべて 2022/9/30)

「もう市場の信頼を回復できないことは明らかだった...」

 スイスのベルセ大統領は19日の記者会見で、ずうずうしくこのように述べました。更に、17日に発生した「クレディ・スイスからの資金流出の大きさと市場の動揺」を目の当たりにして、「迅速な安定化策が絶対的に必要と判断した」と、こちらも「ぬけぬけ」と振り返ったようです。


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最大40億スイスフラン(約6千億円)の増資を行ったばかり...

 最大40億スイスフラン(約6千億円)の増資を行い、サウジ・ナショナル・バンクが最大15億スイスフランを引き受け、9.9%を保有する株主となっています。
 普通株などの中核的自己資本(CET1)比率は、「9月末時点での12.6%から、増資後に14%まで上昇する」との報道がありました。
 これって、まるで『寸借詐欺』の類です。流石に、アラブの方は怒り心頭でしょう。体良くダシにされたんだから...。で、なだめる為、「株式25%」をUBSが買い取るハメに?

約160億スイスフラン(約2.2兆円)の劣後債を「紙屑」へ

 スイスの金融機関大手クレディ・スイス・グループは19日、同社が発行した劣後債の一種である「AT1債」について、約160億スイスフラン(約2.2兆円)分の価値をゼロにすると発表しました。ブルームバーグのデータによると、他社発行分を入れて、AT1債の発行額は世界で「約2750億ドル(約36.3兆円)に上るとのことです。

世界の劣後債36兆円が市場へ襲い掛かる・・・

 既に、「値段の確認だけでなく実際に売る動きがあり、上乗せ金利(スプレッド)が拡大している」(国内証券の社債トレーダー)との報道もあります。20日の東京市場ではAT1債を保有する国内の金融機関が、早くも国内外のAT1債を売却する動きがみられたようです。
 また、ブルームバーグによると、20日のアジア市場では香港の東亜銀行など一部の金融機関が発行したAT1債の価格が大幅に下落(利回りは上昇)している、とのことです。このUSBの決定は、世界で訴訟騒ぎが乱立する「阿鼻叫喚の世界」が見られる事でしょう。

金融当局は、勝手気儘に「金融機関を破綻(株式を無効)させたがる」...

 何をかいわんやです。混乱の芽を事前に詰むのが「金融当局の役目」と大見えを切って胸を張るのが、いずこの国でも金融当局者です。所詮、通貨は「信用創造の産物」なので「消えて無くなる運命」ですから、日本のようにご丁寧に『タンス預金』などしてもらったら大迷惑です。
 手元から消え去るのは「お金を消費した」時、この世から消えて無くなるのは「銀行へ預金した」時です。金融当局は、都合の良い時だけ出張って来て、全てを掻っ攫って行く...。

スイスは、投資家の『信頼』を失ってしまった・・・

 歴史ある金融大手のクレディ・スイス・グループ、投機家から株式が売られ始めるや否や1週間で経営破綻させられました。更に、世界中の富裕層、名だたる投資家から銀行資本への増資を受けた途端に破綻させる荒業etc...。
 株式より上位にある筈の「劣後債(債券)」を価値ゼロに落とし入れる。本来価値がゼロになる筈の株式を25%だけは救い上げる姑息な手段etc・・・。もう滅茶苦茶です。
 伝統ある、何が何でも投資家の資金、預金者のマネーを守る国「スイス」の信用は、大きく棄損、悲しいかな米国へ屈服して「地獄」へ落ちてしまいました。

編集後記

 強制的にクレディ・スイス・グループを破綻へ追い込み、解体したは手並みはお見事ですが、あまりにも先々に手を打つことは果たしていいことなのか?
 これ、投資家も従業員も、投資先や自社を早々と見切ることが尊いことだという、誤ったメッセージ送ることにならないのか?
 更に、UBSは2027年までに統合後の年間コストベースを80億ドル(約1兆500億円)余り削減する計画を明らかにしています。これはクレディ・スイスの昨年経費のほぼ半分に相当します。銀行経費の大部分は人件費なのです。怒れサラリーマン!
 思うに、これでは誰も『労を負って汗をかく』ことをせずに、目の前の稼ぎに精を出して、あるいは平々凡々と日々を過ごすことでしょう・・・。


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